160技術伝承と技術養成所

 学生時代に自動車部に所属していました。公道を走行するラリー競技と専用のダートコースを走行する競技に参戦するため、定期的に走行練習をすることが主な活動になっていました。部活動の集合時間は22:00頃で、ダートを走るための装備を施した車数台で、山間部を走行し、3:00頃に終了といった活動です。ほとんどの部員がバイトで貯めた10万円ほどの資金で中古車を購入していました。この金額で手に入る車といったら、サニー、カローラ、ギャランの10年落ちの車です。

 本ブログ№016では競技に勝つための車の改造について記述しました。ここではドライブテクニックについて記載します。ダートコースの高速走法は通常の運転技術とはだいぶ違います。以下の通りです。

①ロールバー(転倒時車体の変形を最小限にとどめる補強部材)、4点シートベルを装備した車にヘルメットをかぶって乗車します。これにより恐怖心から解放されます。

②4点シートベルトで体をシートに密着させます。運転時にはフットレストに足をかけ踏ん張ります。これにより体はさらにシートに固定されます。

③クラッチを切ってエンジンをかけます。ギアを1速に入れます。アクセルを吹かし最大トルクが発生する5,000~6,000rpmをキープします。左手でサイドブレーキを外す準備をします。

④スタートの旗が振られたら、サイドブレーキを外し、同時にクラッチをつなげます。

⑤左カーブがみえてきたら、少しだけハンドルを左に回します。すると後輪が弧を描いて滑り出します。すかさずハンドルを戻し、若干右に回します。ここでアクセルを吹かすと小さな回転半径で曲がることができます。アクセルを戻すと大きな回転半径で曲がることが出来ます。これをドリフトといってハンドルでコーナーを回るのではなく、アクセルの加減でコーナーを回るダートの基本的な走行です。重要であるのが、いかに正確に車の滑り出しを検出するかです。この滑り出しを検出するのが、人間の場合、腰と背中です。②で体をシートに密着する理由がここにあります。

 以上が、基本的なダート走行の流れですが、天候、コーナーの路面状況、車速、ギアなど様々な状況で微妙な調整が必要となります。全ての状況について上記のよう手順書を作成し、新入部員に渡しても、走行はできません。センシング機能が無いからです。人間のセンシング機能は、訓練によって養われるからです。無数にある条件に対し、最適な走行を選択することも多くの経験が必要です。人間の場合ポカミスもあります。

 IoT、AIはどうでしょうか。正確なセンシング、状況判断、最適化、ポカミスもしないので、上記のような技術をIoT、AIに伝承することは効果的だと思います。

 では人間はどうしましょうか。重要なのは、ベテランが持っている技術だけではなく、その技術を生み出す創造力やマインドです。ベテランはこれらを後に続く人達たちに伝承し、後に続く人達たちはさらに新しいものや方式を生み出していくべきだと思います。常に、IoT、AIの先生であるべきだと思います。技術面、精神面の両方を鍛え上げるオートレース、競艇養成所やトップガン養成所と同様にものづくりエンジニアを育てるトップエンジニア養成所があってもいいと思います。

SHIMAMURA ENGINEERING OFFICE

ものづくりの普遍のテーマに取り組んできた生産技術者の備忘録です。 スマート工場に向けた自動化、IOT、AIの活用について記載しています。 ご相談は下記のシマムラ技術士事務所へ。 It describes Automation and IoT/AI for smart factories. For consultation, please contact the following office.

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