159多品種大量生産

 先日、横浜のニュースパーク(日本新聞博物館)を見学しました。入口には大きな輪転機が展示されており、館内では日本における新聞の歴史が紹介されていました。既に100年以上の昔から輪転機を使って新聞は大量に印刷されていました。当時は活版印刷でその工程についても詳しく紹介されていました。

 活版印刷の工程は次の通りです。①記事の内容を新聞大の金属性フレームに一字一字ハンコを植えていきます(植字)。②植字が済んだフレームの型を作ります。型は紙粘土の様なもので、フレームに押し付けて作ります(紙型。)③紙型を円弧状にして鉛を流し、円弧状の鉛型にします。④鉛型を輪転機のドラムに取り付けます。⑤輪転機を駆動させ、印刷が始まります。

 現在の印刷の主流はオフセット印刷です。デジタル化された記事を写真技術やレーザー技術によって、ある種の感光体にその情報を転写します。その感光体は光が当たった面は撥水性、当たらなかった面は親水性となる性質があります。感光体は輪転機のドラムに取り付けられます。ドラム回転時に水と油性インクがドラムに供給されます。具体的には、文字となる撥水性の面にインクが、それ以外の親水性の所に水が供給されます。インクは一旦ブランケットといったローラに転写されます(オフされます)。次にブランケットから紙に文字が転写されます(セットされます)。

 活版印刷からオフセット印刷まで多くの技術開発がされてきました。生産性、品質も大幅に改善されてきていると思います。しかし変わらないのが、輪転機による活版印刷の時代でも、大量の読者に対して、毎日または毎朝、毎夕全く違った記事をデータでなく、ものとして供給してきた点です。さらに広告や尋ね人など個別要望にも対応してきています。新聞業界は100年以上前から多品種大量生産を実現していたと言えると思います。

 マスカスタマイゼーションという言葉を聞いて久しくなります。マスカスタマイゼーションとは、顧客の個別要望に応えるカスタムメイドやオーダーメードの特徴を、大量生産(マス生産)のコンセプトを取り入れながら低コストで実現しようとする考え方、個々の顧客のニーズに合わせた多品種大量生産のこととあります。(ex. Buzz wordsから) スーツなどのイージーオーダーやPCのオンラインショップなど、顧客の選択肢をあけ程度限定し、その組み合わせによって顧客の要望にできる限り応えようとするものです。

 ノートPCの総合組立では、部品やユニットを顧客の要望に応じて組み立てていきます。ユニットの種類、色の種類、インターフェースの種類など組み合わせによって、数百、数千の品種になります。当然、同一製造ライン上に異品種を流す混流生産になります。検査工程も混流となります。梱包はPCの外形などが同じなので、作業としては共通化が可能ですが、ラベルの貼付、説明書の添付はやはり個別対応となります。この取り組みを実践しているあるPC工場では月産20万台レベルを達成しています。

 前述の新聞印刷とPC組立の共通点は、機能・性能が多品種を生んでおり、ものとしてのサイズ、形状に大きな違いがないといった点だと思います。

SHIMAMURA ENGINEERING OFFICE

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