153外観検査の問題点
外観検査の問題点ついて、SKGマネジメント 坂田愼一氏の「外観検査の現状と問題点」といった記事が技術情報協会出版の書籍に掲載されています。ここでその1部を取り上げ、自らの経験と見解を記載したいと思います。
<記事の抜粋>
製品の品質を管理する場合に、性能や特性を計量値で管理する「機能的品質」と外観のキズや汚れの状態を計数値で管理する「魅力的品質」に区別される。
顧客の立場で価格が同程度のA社品とB社品を評価すると、性能や特性など機能的品質に差が無い場合、デザインや仕上げなどの魅力的品質を比較して好みの製品を選ぶ。
このように顧客は、同程度の価格で性能や特性に差がない場合に、A社品とB社品の魅力的品質を比較して好みの色や形など外観品質の優れたA社品を選択し購入する。
モノ作りの最終工程で実施する製品検査(最終検査、出荷検査、完成品検査、立会検査とも言う)を担当する外観検査員と同様に、顧客も仕上げの状態や色合い形などを繰り返しチェックして、気に入った製品を選択する。
外観検査は製品や部品のキズや汚れなどをチェックして合否の判定を下し、「顧客に魅力的品質を保証する」ことが目的であり、顧客緒満足度を高める重要な業務となっている。
<経験と見解>
大学の卒論のテーマが「旋盤の剛性について」でした。円柱状の金属を旋盤で加工すると条件によって、円周上の表面に周期的な鱗状の模様が現れます。いわゆるビビリといった現象です。表面粗さ、寸法精度には問題がないのですが、見た目が良くなく商品価値としては下がってしまいます。卒論ではこの原因調査がテーマとなりました。ビビリ現象は旋盤自身または材料が持っている固有振動数と関係があると仮設を立てて、調査しました。
旋盤の主軸部、刃物台、心押台の周辺箇所をインパクトハンマーでたたいて、固有振動数を測定しました。材料については形状、ヤング率と質量が分かっていたので、計算で求めたのだと思います。原因は刃物台に絞られ、モデル化し検証しました。刃物台にはバイトが取り付けられていますが、バイトの突き出し量でその系の固有振動数が変わり、突き出し量によってビビリが発生したと結論付けたと記憶しています。
ものづくりをする中で、顧客の要求仕様を満足しているにも関わらず、見た目、見栄えが良くなく商品としての価値が下がってしまう場合があります。(曲がったキュウリは、新鮮さ、味に問題がなくても消費者からは敬遠されます) 今まで、IOTに必要となるセンシング対象として、温度、圧力、電流、位置誤差などを考えていましたが、見た目、見栄えなどを含めて改善対象とすると、製造設備の諸元、材料の諸元や治具、工具の取り付け誤差なども対象にしていく必要が出てくると思います。
製品の外観にキズや汚れが少々あっても機能的に問題が無いのであれば、市場に出してしまうといった考え方もあります。しかし、抜粋記事にある様に、コンペチタがいる場合は、自社製品は購入してもらえません。または買いたたかれることになります。
キズや汚れのあるものは不良品として処分すれば、歩留まりが低下します。外観検査だけでは本質的な課題を解決することはできません。上記、経験事例にあるように、魅力的品質を損なう原因を突き止め、対策をすることが重要だと思います。
IoT、AI化の推進も外観検査と品質改善はセットで進めていくべきだと思います。
0コメント