152検査・計測工程の重要性
検査・計測工程の重要性について、㈱ニッセイ基礎研究所 百嶋徹氏の「製造業などにおけるAI・IoTの利活用の在り方」といった記事が技術情報協会出版の書籍に掲載されています。ここでその1部を取り上げ、自らの経験と見解を記載したいと思います。
<記事の抜粋>
半導体工場における検査・計測工程の重要性:キオクシアでは、品質・管理レベルの向上と生産の合理化を高度に両立する世界最先端の半導体製造プロセスを実現するため、AIの利活用において特に力点が置かれたのが、「歩留まり解析」と「欠陥検査」のAI化による技術者・エンジニアの業務サポートである。~中略~
最先端の半導体製造における「ナノオーダーの極限に迫るものづくりの鍵を握っているのが、『検査・計測技術』である。なぜなら、すべての工程の仕上がりを、その都度綿密に確認・管理してはじめて、品質・機能・サイズなどの基準を満たす良品を世界市場に出せるからである。優れた生産品質を確保して歩留まりを上げ、より早く多く製品を市場へ届けるためには、検査・計測技術が不可欠である。歩留まりの良し悪しが出荷量の多寡に直結し、そのまま会社の収益に影響する」。また、「半導体の製造ラインでは、加工処理の工程が完了する度に検査・計測を行い、データを加工装置にフィードバックしてパラメータを最適化するシステムが導入されており、検査・計測工程は半導体製造プロセスの30%以上に達する重要なウエイトを占めている」。~中略~「3次元化や高積層化が進むに連れ、プロセスの難易度も上がっていくため、新しいプロセスに適合する検査装置の開発や管理手法の導入まで、イールド(歩留まり)の視点からイノベーションを推進している」。
<経験と見解>
製造工程において、各工程間さらには最終工程においてその製造物が基準を満たしているか否かをOK、NGの2値で表している場合があります。これはAI分析精度を向上させるに当り都合がよくありません。機械学習においてはNGの例が重要となりますが、一般の製造ラインで発生するNGデータは、極端に少ない場合がほとんどです。したがって工程で処理された結果が、基準をどのくらい満たしているか数値化する工夫が必要となります。
プリント基板製造においては、最終検査工程において2つ検査・計測が行われます。一つは、クーポンを使った抵抗測定、もう一つは任意部分の断面目視検査です。クーポンとは製品のプリント基板の一部に検査用のパターンを形成して、その抵抗値を測り、製品の良し悪しを判断するための、基板側の仕掛けです。この仕掛けにより自動で抵抗測定が可能となり、品質の高いデータを収集する事ができます。断面目視はプリント基板を切断し、断面を樹脂で固め研磨し、パターンの厚み、亀裂などを目視、その状態を数段階にクラス分けします。断面サンプルの作成に工数がかかるため、抜き取りによる最終確認チェックといた意図で行われます。また、断面を画像データとし保管できるため、不良発生の真因を探求するといった意図でも使われます。
いずれにしても、OK、NGの2値ではなく製造結果のレベルがわかる工夫がされており、AI分析の目的変数として使うことが出来ます。分析精度を上げる手段の一つとして検査・計測工程におけるデータ作成の工夫は重要となると思います。
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