154振動測定による状態監視
振動測定による状態監視ついて、日本ナショナルインスツルメンツ㈱ 岡田一成氏の「振動測定による状態監視装置の導入と活用の方法」といった記事が技術情報協会出版の書籍に掲載されています。ここでその1部を取り上げ、自らの経験と見解を記載したいと思います。
<記事の抜粋>
振動を用いた機械設備の診断には「簡易診断」と「精密診断」の2種類がある。人間の健康診断に例えると、簡易診断は機械設備の安定健康診断に相当し、異常の有無を判定するものである。簡易診断で異常が見つかった場合、原因特定のための精密診断が実施され、機械設備の修理や補修が行われる。この監視診断と精密診断の区別は、状態監視システムの構築時には重要である。なぜなら両者は目的が異なるため、データ収集と分析の方針が異なってくるためである。
簡易診断;簡易診断の目的は、機械設備の状態が監視できるデータを計測し、その経時変化から機械設備の劣化や異常を早期に検出することである。振動を用いた診断を例に挙げると、基準の取り方によって、絶対判定法、相対判定法、相互判定法、デジタルツインの4種類がある。
精密診断:精密診断の目的は、上述の簡易診断にて異常だと判定された設備機械に対して、その異常原因を特定することである。下記は回転機械の診断内容の代表例。
機構部品:アンバランス、ミスアライメント、軸摩耗、ガタ、据付不良
ベアリング:内輪損傷、外輪損傷、転動体損傷
ギア:軸芯ズレ、片当り、歯の摩耗、波形誤差など
モータ;高周波振動、電源不平衡
ファン、ポンプ:圧力脈動、摩耗など
<経験と見解>
入社数年後の業務でプリンターの不具合を調査する機会がありました。小型レーザプリンターのサンプル画像において、何本かの筋ができてしまうといった不具合でした。当時のサンプル画像はベンツのフロントガラスであり、あたかも雨が降ったように数本の筋が、フロントガラスの上についていました。これがプリンターの品質において良くないことは言うまでもなく、早急に原因を調査して対策する必要がありました。
プリンターの機構は感光ドラム、転写ドラム、定着ローラ、ピックローラといった回転体を数個のパルスモータで駆動させますが、駆動力を伝達させるために、多くのギア列を構成する必要があります。プリントは一定の速度で行われるので、ギアを含めた回転体には周期性が伴います。(周期的特性)
前記の周波数特性を持った様々な波が合成波となって、先ほどの一定ではないdot間隔の画像を作り出します。逆に、この画像結果を使ってフーリエ変換することで、どの周期の部品が原因であるかがわかります。このdot間隔を読み取る装置は世の中にあり、同時に合成波を検出しフーリエ変換します。その結果、伝達系のあるギアが原因であることを突き止めることができました。そのギア精度を高めることで、解決できたと記憶しています。
上記の例でいえば、サンプル画像において、何本かの筋ができてしまうといった現象を検出する事が簡易診断であり、伝達系のあるギアが原因であることを突き止めることが精密診断といえます。
製造工場においても同じことが言えると思います。最終検査工程において、キズ、汚れなどに周期性があれば、どこの設備のどこの機構要素でついたかがわかると思います。簡易診断するにあたっても精密診断するにあたっても、機械設備はあらかじめ正常時の周波数を収集しマスターデータとして登録しておくことが望ましいと思います。
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