150設備不具合の大半は振動問題

 設備不具合について、日本ナショナルインスツルメンツ㈱ 岡田一成氏の「振動判定による状態監視装置の導入と活用の方法」といった記事が技術情報協会出版の書籍に掲載されています。ここでその1部を取り上げ、自らの経験と見解を記載したいと思います。

<記事の抜粋>

 国内の製造業者が直面している主要な課題として、人手不足や熟練技術者の技能継承があげられる。また、このようなビジネス変革から、工場における機械設備の異常検知を人間の五感に頼った定期巡回検診から、計測装置を用いたオンライン状態監視システムへの移行ニーズが高まっている。このアプリケーションの一つとして、振動測定による機械状態監視がある。~中略~

 設備不具合の大半は振動問題:工場における機械設備の異常検知には振動測定が頻繁に行われる。これは機械設備の不具合の大半は異常振動だからである。このことは日本機械学会が蓄積している10年間のデータからも分かる(図略)。特に回転機械の振動問題が多いことがわかる。~以下略~

<経験と見解>

 振動による機械設備の状態チェックの手順は一般的には次の手順になります。

①対象となる設備に振動ピックアップ等を取り付け、データを収集する。

②データを周波数分析して、正常状態の結果と比較して異常、正常を判断する。

③機械設備のどの要素から異常振動が発生しているかを解析して原因を特定する。

この中で①②が設備導入側のチェックで、③が設備メーカー側のチェックです。

 周波数分析は機械の不具合を数値で明確に表せる点、原因が特定できる点で異常を分析する最も有効な手段の一つだと思います。例えば、以前本ブログでも紹介しましたプリンタの印字異常においても、サンプルプリントからプリンタの駆動時の振動を読み取り、周波数分析をした結果、ローラを駆動する動力伝達系のギアの一つに問題があることを突き止めました。

 しかし、注意しなければいけないのが、周波数分析は周期性のある振動でないといけないといった点です。ランダムな振動や常に変化が伴う事象に関しては対応できません。例えば、多品種に対応するロボットなどは、条件が変わると、自動的に動作(移動距離、速度、加速度)が変わります。こういった中で周期性のある振動を取り出すことは難しいと思います。

 以前、ハードディスクドライブの自動組立設備を開発した経験があります。その設備の中に多軸同時ネジ締め機といった設備がありました。ハードディスクドライブの部品の締結は一定トルクでネジ締めが必要となります。これをラインで運用する際には毎回トルクチェックをします。エンドエフェクタであるネジ締めドライバーを持ったロボット自身が、トルクチェッカーがおかれている場所まで移動し、ドライバビットをチェッカーに押し当てて、ビットを回転させます。計測結果に問題が無ければネジ締め作業に入ります。また、ロボットの位置決め精度や、接着剤塗布のディスペンサーの状態チェックなどは1日数回セルフチェックプログラムにより自動診断しています。

 振動に関しても同じ方法が使えます。ロボット自身が定期的に振動ピックアップをもって、周期性のある動作を繰り返すことで振動データを収集する事ができます。これらデータを長期に収集することで異常を予兆する事も可能となります。

SHIMAMURA ENGINEERING OFFICE

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