148 IoT・AI推進に必要なこと
日本経済新聞と日経BP社の専門サイト「日経xTECH」が2018年7~8月に実施した、日本の主要企業(大手113社)へのAIの活用状況に関わるアンケート調査によれば「データはあるが、使える状態になっていない」企業が35%に上がり「収集できていない」も2割を占め、「どんなデータが必要かわからない」も含め6割の企業が、AIの運用に欠かせないデータ活用で課題を抱えていることがわかった。また、日本政策投資銀行が2019年6月に実施した「企業行動に関する意識調査(大企業)」によれば、「AI、IoTを活用している。または活用を検討している」企業の比率は、製造業(485社)では43%、非製造業(643社)では37%にとどまっている。
このように、我が国では大企業でさえ、データやAI・IoTの利活用について、課題を抱え遅れていたり、あるいはまだ緒についたばかりである。というのが現状だが、今後我が国企業の経営層や従業員が現状のデータ利活用の遅れから脱して、データの共有・共用もうまく取り入れながら「データ革命」を本格的に推進することを期待したい。
以上、「製造業などにおけるAI・IoTの利活用の在り方」㈱ニッセイ基礎研究所 百嶋徹氏の記事(技術情報協会:書籍)より一部抜粋。
自動化を含めIoT・AIを推進するにあたって最も重要な要素の一つが、必然性と危機感にあると思います。トップをはじめ全員が必然性と危機感を持つことがIoT・AI推進に必要なことだと思います。以下に過去の経験を記載します。
<球技用ボールを製造しているA社に多関節ロボットを100台導入>
ボールの革の貼り付けは加熱加圧が必要な過酷な作業です。以前は作業者が加熱ヒータのそばで大きなレンチで力いっぱいねじ締め加圧をしなければならず、夏場は汗まみれになりながら塩をなめながら作業をしていたそうです。A社の設備部隊は、この劣悪な作業の改善と品質安定化のため、油圧による自動加圧機構の開発に着手、型の内面に革を自動で並べる手段として当時開発していた多関節ロボットを採用してくれました。
こういった苦労の中で、A社がロボットを運用し続けることができたのは、自動化せざるを得ない環境にあったことはもちろん、コンペチタであるB社の台頭も大きかったと思います。短期間に力をつけてきていたB社は技術的にはA社と同等レベルでした。A社社長の危機感はかなりなものであり、製品の差別化はもちろん、製造面の差別化優位化についても厳しく取組み、結果、自動化推進の牽引力につながったと思います。
<ハードディスクドライブの自動組立ラインを20ライン海外拠点へ導入>
ハードディスクドライブの自動組立ラインの必要性は品質改善です。ハードディスクドライブの組立環境(クリーン度)が年々厳しくなってきていました。製造工程内のコンタミ、発塵による品質不良を削減するため、自動化が必要です。人が部品に触ればコンタミの原因となり、人が動けば発塵します。当時、中長期の製品技術開発のロードマップと並行して生産技術開発のロードマップが作成されており、自動化に切り替えるタイミングでした。
<プリント基板製造の品質改善へ向けたIoT・AIシステムの導入>
あるプリント基板製造工場では、各工程から上がってくる刻々と変わる加工条件のデータを24時間体制で監視し、工程毎に決められている管理値を外れないようにチューニングしています。にもかかわらず、いまだに突発的な不良が発生や、製造ラインを停止せざるを得ないケースなど、従来の取り組みだけでは解決できない問題が見えてきていました。特にライン停止になると自社だけではなく、SCMの各社に迷惑をかけます。また、原因がわからないため、工程の液槽をすべて入れ換えるなど、膨大な費用と時間がかかります。
この状況に危機感を持ったトップが、多因子が絡む問題の解決にはIoT・AI技術が必要である事を理論的に関連部門に説明していました。当時データ活用の技術開発が行われていた生産技術部門は、この工場からのIoT・AIシステムの導入サポートの依頼後、すぐに共同プロジェクトを作り、課題解決に取り組みました。
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