146 ICTとIoT・AI

 前職の生産技術部門において、ICTとIoT・AIの2つの取り組みを経験してきました。ものづくりには2つの軸があります。1つはPLM軸、1つはSCM軸です。ここでは、PLM軸に関してそれぞれの取り組みを取り上げます。SCM軸:受注→調達・購買→生産→出荷→物流・配送。PLM軸:製品企画→開発・設計→生産準備→工程設計→生産。

<抜粋>ICT:「富士通のものづくり革新」日本ロボット学会、学会誌

 FJPS(TPSをベースに、ものづくり全領域をICTで繋ぎ、全体最適な改善活動を目指した富士通生産方式)で考えている統合型PLM(Product Lifecycle Management)の環境を示す(図略)。統合型PLMは、ものづくりを構成するPLM軸とSCM(Supply Chain Management)軸の全ICTを統合して有機的に機能させる。

 CRM(Customer Relationship Management)やERP(Enterprise Resource Planning)といったエンタープライズ系ICTツールは比較的早くから統合され活用が進んでいるが、CADやCAEなどのPLM系ICTツールはバラバラに導入され、その活用は開発現場・生産現場のスキルに依存しているケースが多かった。

 統合型PLMでは、CAD/CAE/PDM/CAMなどエンジニアリングツールの全体の共通モデルとなる「DMU(Digital Mock-Up)」が、バーチャルプロダクトとバーチャルファクトリーを繋げる。これにより開発領域と生産領域の仮想検証機能が連動し、「ものを作らないものづくり」の実用化が可能となった。さらにリアルファクトリーと繋げるため、自動化、ロボット化などICTと相性が良いデジタル化を推進している。

<解説>ポイントはDMUです。製品開発部門で設計した段階でその3Dデータをほぼ同時に生産技術、製造技術、に配信されます。生産技術ではそのデータを使って工法の検討と自動化の検討を進めます。製造技術ではそのデータを使って製造ライン検討、組立手順書の作成、組立治工具の設計などを進めます。不具合があれば製品開発部門へフィードバックされます。製品開発、生産技術、製造技術がDMUで繋がり、実際の形ができる前にものづくりを作り込みます。

<抜粋>IoT・AI:「プロセス系工場でのIoT/AIを活用した品質改善への取り組み」技術情報協会 書籍 「工場・製造プロセスへのIoT・AI導入と活用の仕方」

 今回のモデルでは(プロセス系工場をモデルとした例では)、データを使って品質異常が発生する予兆を検知しこれに基づいて改善対策を実施する仕組みの開発に取り組んだ。データを活用した従来の品質改善の流れと異常予兆検知による品質改善の流れを示す (図略)。従来の手法では、現場から収集したデータをリアルタイムに見える化し、品質の異常発生を検出して改善対策を実施する。異常予兆検知を取り入れた手法では、品質に大きく影響する要因のデータをリッチ化しAIによるデータ分析を行うことで異常予兆を検知し、改善対策を実施する。つまり、前者では不良発生後の改善になるのに対して、後者では事前に改善を講じられ不良を未然に防止することができるのである。

<解説>異常予兆検知のAIシステムを導入するために、現地調査からフィージビリティースタディーを1年かけました。異常予兆を検出するためには、まず十分な製造データ、プロセスの条件データと、その結果出来上がった製品の品質レベルがどの程度になるかの結果のデータが必要になります。過去に遡ってそれぞれのデータが、時系列または製造ロットと紐ついていることが必要となります。その紐ついたデータをAIシステムで学習することで、予測モデルを作り、その予測モデルに直近の製造データをインプットすることで、実際の結果が出る前に、品質のレベルを予測します。(異常の予兆を検出します)。詳細は本ブログ№104~№116を参照してください。

 ICTは人が作った情報を関係者に迅速に伝え、後戻り無く効率的に事を進めるシステムで短期間に効果が出ます。一方、IoT・AIは刻々と変わる物の状態情報を使って、製造品質をリアルタイムに、または予測値を基にコントロールします。いかに物の状態情報を正確にとらえることが出来るか否かで、その効果が左右されてしまいます。

SHIMAMURA ENGINEERING OFFICE

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