135自動化の必然性
自動化の必然性について、ロボコム㈱天野眞也氏の「産業用ロボットの普及、促進と今後の課題」といった記事が技術情報協会出版の書籍に掲載されています。ここでその1部を取り上げ、自らの経験と見解を記載したいと思います。
<記事の抜粋>
まずは「自動化の必然性」についてだが、おのずと自動化の必然性が高い分野が真っ先に企業の設備投資対象となり、自動化が図られてきた。その設備投資には、もちろん産業用ロボットも含まれる。例えば自動車産業における溶接工程、塗装工程などが代表例だといえる。溶接は「アーク溶接」「抵抗(スポット)溶接」「レーザー溶接」などがあるが、いずれも大きな熱や電流を扱うため、非常に危険を伴う作業になる。場合によってはそもそも人が手で作業できないレベルの危険な工程も多数存在する。また、塗装工程も塗料の雰囲気が舞うため、同じ空間に人が入りにくく、ロボット化のニーズが非常に高い。自動車産業ではいわゆる3K(きつい、きたない、危険)分野から導入が進んできたとも言える。
一方でエレクトロニクス分野は「人よりもロボットが効率的」な作業からロボット化が進んだ。精密な位置決めが必要な組立工程や、高速な移載がもとめられる搬送工程などだ。場合によってはミクロン単位での位置決めが必要で、そもそも人では作業できない工程なども含まれる。この場合、単純にロボットを導入する方が品質の高い製品を作ることができ、なおかつ人よりも生産性が高い場合も多い。
一方で、食品産業ではほとんどの工程において人で作業ができてしまう。そのうえ、目視をして盛り付けをしたり、ロボットでは扱いにくい柔らかい素材や形が決まっていない素材を取り扱ったりするため、むしろ自動化するよりも、人の方が向いている作業の方が多い。そのため、設備投資がなかなかされず、人手による工程が多く残り、産業用ロボットの導入が進んでいない。
<経験と見解>
90年代後半の話になります。ハードディスクドライブの自動組立ラインを開発して、フィリピン、タイの工場へ導入した経験があります。当初まわりの人達から、「人件費がかからない東南アジアで自動化の必要性があるのか」といった声がよく聞かれました。最終組立工程において、自動化を進めても人を削減することは難しいものです。組立を行うオペレータが減ったとしても、自動化設備ロボットをチューニングし、メンテナンスし、機種変更に対応する技術者が逆に必要となります。目的は人件費の削減ではありません。
最終組立工程の自動化の本来の必要性は品質改善です。ハードディスクドライブの組立環境(クリーン度)が年々厳しくなってきていました。製造工程内のコンタミ、発塵による品質不良を削減するため、自動化が必要です。人が部品に触ればコンタミの原因となり、人が動けば発塵します。コロナウィルスに似ています。自動組立ラインの基本構成は①組立パレット ②フリーフローコンベア ③パーツ供給 ④組立ロボット ⑤エンドエフェクタ となります。 詳細な機能と特徴についてはブログ№092「自動組立ライン」を参照してください。
この「自動組立ライン」では、工程間の移動、各工程の作業を自動で行います。人は各工程の部品の整列と供給を行いますが、ラインとは完全に分離されています。以上の構成で、クラス20のクリーン度を実現することができました。ラインのタクトタイムは20秒で従来のマニュアルラインと同じレベルです。
あらためて思うことは、人にはできないことは自動化せざるを得ません。スピード、精度、環境(クリーン、放射能、高温、高所など)、24時間稼働など 将来の姿を見通して、早めの検討が必要です。
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