134稼働監視と予知保全
稼働監視と予知保全について、㈱FAプロダクツ貴田義和氏の「既存設備を活かす稼働監視と予知保全の方法」といった記事が技術情報協会出版の書籍に掲載されています。ここでその1部を取り上げ、自らの経験と見解を記載したいと思います。
<記事の抜粋>
工場のIoT化といっても、様々な目的やアプローチ方法がある。その中でも着手しやすさや効果の出しやすさなどは千差万別である。~中略~ 工場の生産設備において、主な管理項目としては次の4つがあると言われている。「保守管理」「生産稼働管理」「品質管理」「在庫管理」である。~中略~ 一般的には「生産稼働管理」「保守管理」が着手しやすく、IoTの効果が出しやすい。
稼働監視からIoT化を始めるメリットとして、着手のしやすさがあげられる。他の管理項目に比べ、データ収集がしやすいという点については圧倒的に優位だ。生産数は何らかの形ですでに自動にカウントされているケースが多く、もしされていなくても、センサやスイッチの追加で容易にカウントすることができる。~中略~ また、稼働監視からIoT化をはじめた場合、収集したあとの改善策が取りやすい。IoT化の目的が「稼働率向上」であれば、停止要因など稼働率を下げている要因を分析して、上から順番に原因を追究していけばよく、「リードタイム短縮」であれば長時間かかっている工程や作業を分析して、同様に順番に改善方法を検討していけばよい。
予知保全からIoTをはじめるメリットも稼働監視と同様、データ収集のしやすさと管理のしやすさがあげられる。故障の予知さえできれば、あとは計画的にメンテナンスするだけなので、運用はいたってシンプルだ。ただし、稼働監視とは異なり、データ収集方法が多岐にわたるため、着手しやすい要件があるのは否定できない。
<経験と見解>
稼働監視からIoT化を始めるメリットの事例:あるプロセス工場で、データを活用して製造品質を予測したことがあります。ここで使用されたデータのなかには、1日2,3個しか収集されていない工程もありました。1日100ロット流れる製品のデータとしては明らかに不足していると思います。その工程の1つとして定温槽がありました。この定温槽のアナログメータへカメラを設置し、24時間撮影しAMR(アナログメーターレコグナーザー)というツールを使い1分間隔でデータを収集してみました。その結果、定温槽を一定に保つサーモスタットのスイッチングの様子や、定温槽に日に1回投入される薬液の影響で温度が変化することが分かりました。温度が1℃変化すると、反応スピードが5倍も変化する工程において、重要な改善ポイントを見つけることが出来ました。
予知保全からIoTをはじめるメリットの事例:メッキの品質を安定させるためには、メッキ槽内の状態を監視し常時チューニングする必要があります。温度、電流密度、イオン濃度さらには生成を促進、抑制する添加材の投入などを適正に管理します。中でも添加材はその性質上、生成を促進、抑制すると同時に副生成物を作りメッキ槽に蓄積されていきます(まるで金魚のフンのように)。したがって、メッキ槽が濁った状態になり、定期的にメッキ液を半分入れ換えたり、場合によっては全入れ換えをしたりします。全入れ換えの場合は、ライン停止が伴い、膨大な費用と時間がかかります。このタイミングを間違えると製品歩留まりが大幅に低下します。メッキ品質を保ちながらメッキ液の全入れ換えを如何に少なくするかといった課題が出てきます。そしてメッキ槽の管理を適正に行うために、IoT AI技術を導入して解決したいといったニーズが出てきています。
稼働監視からIoT化を始めても、予知保全からIoTを始めても品質改善に結びつくことは確かです。
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