133異常検知と予知保全
異常検知と予知保全について、㈱システムインテグレータ梅田弘之氏の「ディープラーニングを使った異常検知の方法」といった記事が技術情報協会出版の書籍に掲載されています。ここでその1部を取り上げ、自らの経験と見解を記載したいと思います。
<記事の抜粋>
(図略)は、異常検知と予知保全(故障予兆)の違いを示したものだ。既に発生している不良や不具合を発見するのが異常検知(Anomaly Detection)なのに対し、異常の予兆をつかんでこのままだと故障することを予測するのが予知保全(Predictive Maintenance)である。
さらに、別の角度では設備異常と製品不良でも分けられる。設備としては、橋やトンネル、壁、鉄塔など屋外の設備やインフラ異常(ひび割れや老朽化)を対象とするものと、製造装置や搬送機など工場内の機械や設備の異常(故障や動作不良など)を対象とするものがある。一方、製品の不良や規格外を見つける品質検査、外観検査など製品(Products)を対象とするものは、一般に異常検知と呼ばれている。こちらのケースで予知保全的なものは、健康予測や生育予測など”生きもの”が対象となることが多い。
このように異常検知と予知保全、設備異常と製品不良にカテゴリー分けするのは、どの課題に向き合うかによって適用するAI技術やアルゴリズムが変わるからだ。例えば、ベルトコンベアで流されてくる製品の不良を発見する異常検知には、画像データをもとにしたCNN(畳み込みニューラルネットワーク)がよく用いられるが、製造設備の故障を予知する場合は音や振動などのセンサーデータをもとにした時系列モデルの変化点検知が有効になる。
<経験と見解>
上記、抜粋記事の中で、製品を対象とした予知保全的なものは”生きもの”が対象となることが多いとあります。これは例えば子供の金魚の飼育がそれにあたると思います。
毎朝、子供は金魚にエサを与えます。与えたエサを金魚が食べる様子やフンをする様子を観察することは子供の最大の関心ごとの1つです。しかし、数日するとエサのカスや魚のフンで水が濁ってきます。金魚が水面近くで口をパクパクし始めると、水中の酸素が少なくなったかな?水温が高いのかな?と思っては水の入れ替えをします。はじめは金魚鉢の2/3程度の水を入れ換えて済ましますが、小石や金魚鉢の内側が汚れて臭くなると、いよいよ全水の入れ替えと小石、金魚鉢の清掃をします。そのタイミングが遅いと金魚は長生きできません。一方、全入れ換えと清掃は子供にとって非常に大変な作業です。何とか水が濁らないように子供ながら考えます。エサをやり過ぎない。フンは網ですくう。少しでもパクパクしたらすぐ2/3の水を入れ換える。金魚と金魚鉢の様子を観察しながら飼育します。
同じ様な事をプロセス系工場でも行われています。プリント基板をはじめあらゆる工業製品にメッキプロセスは欠かせません。メッキは”生きもの”ではありませんが、それに相当するものとして考えることが出来ます。
メッキの品質を安定させるためには、メッキ槽内の状態を監視し常時チューニングする必要があります。温度、電流密度、イオン濃度さらには生成を促進、抑制する添加材の投入などを適正に管理します。中でも添加材はその性質上、生成を促進、抑制すると同時に副生成物を作りメッキ槽に蓄積されていきます(まるで金魚のフンのように)。したがって、メッキ槽が濁った状態になり、定期的にメッキ液を半分入れ換えたり、場合によっては全入れ換えをしたりします。全入れ換えの場合は、ライン停止が伴い、膨大な費用と時間がかかります。このタイミングを間違えると製品歩留まりが大幅に低下します。メッキ品質を保ちながらメッキ液の全入れ換えを如何に少なくするかといった課題が出てきます。そしてメッキ槽の管理を適正に行うために、IoT AI技術を導入して解決したいといったニーズが出てきています。
抜粋記事から考察すると、いずれの場合も、温度、濃度などのセンサーデータをもとにした時系列モデルの変化点検知が有効となると考えることが出来ます。
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