131生産条件と品質の紐付け
生産条件と品質の紐付けについて、「製造業におけるIoTからAI(データ解析)に繋げる為の技術者教育と組織の作り方」といったテーマで住友金属鉱山㈱佐藤健司氏の記事が技術情報協会出版の書籍に掲載されています。ここでその1部を取り上げ、自らの経験と見解を記載したいと思います。
<記事の抜粋>
工場の技術者には「適切にデータを集めて解析を行うと有効な結果が得られる」というデータリテラシーを身に着けてもらう必要がある。「適切に」の具体内容と「有効な結果」との繋がりが最初は理解できないところから始まるであろう。「有効な結果」に繋がるデータ解析ができるようにするためには、生産条件(前提)と品質(結果)とが紐付く必要がある。生産の管理単位であるロットの区切りが、目に見えてはっきりする個品管理の場合と、粉や液体が連続的に流れている流動物管理の場合では管理の仕方が大きく異なる。
個品管理の場合はロット番号と個品が明確に認識できるので、一見、生産条件との対応がとりやすいように思われるが、生産条件の保存をロット単位で行っておらず時系列で保存している場合があり、この場合は様々な問題が発生する。~中略~
粉や液体の様に製品の形がない流動物管理の場合、ロット番号と流動物との対応を明確に認識することができない。輸送などの梱包が行われたときに味覚な区切りを付けることは可能になるが、その生産条件を手繰り寄せる為には予め何らかのロット番号を割り振っておかなければならない(後からロット番号を割り振る様では手遅れ)。流動物のロット管理は、一定時間、若しくは一定量毎に仮想的なロット番号を自動的に割り振るべきである。流動物がタンクなどに貯留される場合、少し前のロットと混合することになる。従って、タンクから出た物のロット番号は新たに割り振り、タンク入れたロットとの親子関係を記録することになる。
<経験と見解>
抜粋記事を読んで思い出された過去に経験したデータ活用の取り組みです。
①チップ実装ラインの頻発停止分析:搭載部品ロット、プリント基板ロット、チップ実装機、チップ供給機、時刻などと頻発停止状況が完全に紐付けされていました。ビッグデータ分析の結果、あるチップ部品の形状が当初想定していたものと違っていたことが原因の一つでした。そのためロボットのエンドエフェクタ(吸着コレット)で安定して部品を把持できず、頻発停が発生していたのです。
②プリント基板の異常予兆検出:対象となったメッキ工程はメッキの前処理から数十のメッキ槽からなる大型設備で連続的に処理されます。処理されるワークはロット管理されており、設備投入時に記録され、一定の流速で処理が進みます。設備で管理できるデータは温度、電流密度、流量など一般的なものであり、最終検査工程の品質レベルと紐付けが可能でした。一方、メッキ液濃度は日に数回人手によるサンプリングによるデータであり、サンプル数が極端に少ないことと、紐付けも誤差を含んでいました。AIの機械学習分析で予兆検出精度7割程度でした。
③焼結部品歩留まり改善に向けた分析:一連の製造過程において、材料ロット、製造設備ロット、製品ロットとロットが変動し、かつ各ロットの紐付けが不明確でした。当然、生産条件と最終品質との紐付けもできない状態でした。まずは紐付けができる仕掛けを工場側で進めてもらっています。
生産条件と品質を紐付けすることはAIを使うか否か関係なく必要な事と思います。
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