127品質信頼性の高い設備
品質信頼性の高い設備について、「ロボットを活用した生産ライン自動化のレイアウト設計の考え方」といったテーマで東海大学の村山 省己氏の記事が技術情報協会出版の書籍に掲載されています。ここでその1部を取り上げ、自らの経験と見解を記載したいと思います。
<記事の抜粋>
自動化により継続的かつ安定的に生産を行うためには、各工程で保証しなければならいすべての検査項目について精度保証が可能な適正な計測機器を設定し全数検査を行い、常に検査値を監視できるようなシステムにしておく必要がある。品質の母集団は図(図略)のような正規分布になるが個々のデータが発生する確率を表す品質管理のツールとして活用される。品質の安定化が重要な製品の生産においては、工程能力指数(Cp値)で品質を評価する管理手法がある。図2(図略)に統計手法を用いて品質のバラツキをデータで管理する工程能力指数(Cp値)について示す。標準偏差の分布幅が(6S)と規格幅と同じ場合には工程能力指数(Cp値)は1.0である。この場合は、規格幅から外れるデータの出現の確率は0.3%である。図3(図略)は、標準偏差と工程能力指数を表したグラフである。分布幅(6S)に対して規格幅が8Sの場合がCp値は1.33となり、工程能力指数Cp値1.0より工程能力が高いと言える。更に、分布幅(6S)に対して規格幅が10Sの場合がCp値は1.67となり、工程能力指数Cp値1.33より工程能力が高いと言える。(図にはCp値1.0の場合規格から外れる確率3/1,000 Cp値1.33では6/100,000 Cp値1.67では6/10,000,000と示されている)
<経験と見解>
自動組立において最も基本的なテーマは、ピンの挿入の問題です。ワーク側の穴に対し、ピンを確実に挿入できるかどうかです。通常、製品の組立では、組立(ピン挿入)後にガタがないことを求められます。したがって、ピンと穴のガタは1/100mmレベルの隙間で管理されています。言い換えれば、1/100mmの精度で穴とピンの位置決めができないと、挿入ができないことになります。
しかし、現実的には穴の寸法誤差、ピンの寸法誤差、ロボットの位置決め誤差、ロボットのティーチング時の誤差など、もろもろの誤差からなるトータル誤差からを考えると、1/100mm精度はとっても不可能な数値となります。そこで製品設計側で、穴、ピンの両方に面取り加工し、入り勝手を付けます。すなわち入り勝手分の位置ずれは許容されるということです。
再度、誤差について考えてみます。前述の各誤差の最大値(最大許容誤差)をすべて合計した誤差が、先ほどの入り勝手の寸法に納まっていれば問題ありません。実際は入り勝手の寸法よりかなり大きな値になる場合が、多々あります。そこで、各誤差の最大値がすべて揃う確率は非常に低いという前提で、次の様に考えます。
穴の寸法誤差±0.02mm、ピンの寸法誤差±0.02mm、ロボットの位置決め誤差±0.05mm、ティーチング誤差±0.05以内に3σの信頼性でそれぞれが保証されている(99.97%は誤差内)と仮定します。トータルの誤差は標準偏差の合成式2乗和平方で求められます。この例の場合、トータルの誤差は±0.076mmとなり、これが3σの信頼性を持ったトータルの位置ずれ量に相当します。ちなみに、最大誤差の合計は±0.14mmです。当然、それぞれの誤差が4σの信頼性であればトータルも4σの信頼性となります。
一般に、世の中の加工、組立、調整ほか、主要な仕様項目の信頼性は3σ以上であるといった暗黙の了解の下に成り立っています。機械設計で設計者が使う公差も同じ様に使うことができます。実際のものができる前に、各製造工程の能力、歩留まりを設計することができます。
得てして、機械要素のユニットを購入し組み合わせるだけの設備設計をしてしまうと、信頼性の低い設備になったり、逆に高額で大きな設備になったりしてしまいます。工程能力指数(Cp値)は設備設計をする中で最も重要なキーワードの1つだと思います。
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