125顧客要求と生産方式

 顧客要求と生産方式の選択について、「既存工場にIoT・AIを導入するためのレイアウト改善の進め方」といったテーマで㈱MEマネージメントの田村 孝文氏の記事が技術情報協会出版の書籍に掲載されています。ここでその1部を取り上げ、自らの経験と見解を記載したいと思います。

<記事の抜粋>

 生産者は生産性向上のニーズから、インプットである生産要素は少ない在庫、量的分業化、自動化の方向で、生産方式を「機能別生産方式」から「ラインの流れ生産方式」に変えてきた。顧客要求に応える新生産システムに示しているように(図略)、生産方式はより生産性の高い左寄りの方向に向かってシフトしてきた。その間、消費者は大量生産された画一的な製品を待たされても購入してきた。しかし、時代は変わり、アウトプットである消費者の顧客満足の要求は多種、少量、迅速化の右方向に向かっている。インプットが左寄りの動きをすると両者の距離はますます広がる。この矛盾を「多品種混流の1個流し生産」などの形で対応しようとしてきたが、それでは生産性さえ追求できなくなった。ここに、顧客満足の要求を見たしながら生産性をも追求するやり方として「セル生産方式」が誕生した。今後、顧客満足の要求から潜在顧客の創造時代へとマーケットイン指向はますます強くなり、顧客一人一人に、一個ずつほしいタイミングで提供することを前提にしたフレキシブル生産方式を模索していかなければならない。

<経験と見解>

 多品種少量生産に対応するため、今のライン生産方式からセル生産方式に変えていく必要があるといった声が聞かれます。これは従来の専用ラインによる生産方式から混流生産方式に変えると言い換えることができると思います。話を進める前にここでの多品種少量生産の前提条件を明確にします。少品種多量生産とは同じものを1日に100個作ります。一方、多品種少量生産とは1日に10種類の製品を各10個作ります。したがって両者ともトータルで100個の製品ができます。トータルの生産量、作業者の数は変動しないという前提です。

 ノートPC、スマホのような電子機器のように、外見上似ていますが、機能、性能、形状、色が違う製品が増えてきています。たとえば、かつてはA、B、Cの3種類の製品を3本の製造ラインで製造していたものが、市場の要求によってA1、A2、A3、B1、B2、B3、C1、C2、C3の9種類になった場合、AラインでA1~A3、BラインでB1~B3、CラインでC1~C3を製造するようになります。さらに、3ラインとも同じように9種類の製品に対応できないかという考えが出てきます。これが混流生産です。そして各工程の作業者は多能工として、セル生産の形態で作業を行います。混流生産の優れている点と課題について考えてみます。

<優れている点>

・3本とも同じラインを構築すればよく、部品も同じものを各ラインへ供給できます。

・トータルの生産量が同じであれば、今日はA1を多く生産するがC1は生産しなくてもいい、明日はA1を少なめでB3を多めで、といったように変量に対しても対応できるようになります。あくまでトータル生産量が同じ前提です。

<課題となる点>

・全製品の組立ができるように、ラインの各工程の作業者に教育をする必要があります。

・トータルの生産量が変動しないように、生産計画を立てる必要があります。

F社のノートPC製造工場では上記生産方式で年間200万台の実績を上げています。

SHIMAMURA ENGINEERING OFFICE

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