124取得したデータが活用できない
「スマート工場の取り組みと日本の課題」といったテーマでPTCジャパン㈱の西 啓氏の記事が技術情報協会出版の書籍に掲載されています。ここでその1部を取り上げ、自らの経験と見解を記載したいと思います。
<記事の抜粋>
取得したデータが活用できない:取得したデータがデータベースの肥やしになっていることが多い、つまり、活用したくても活用できない状態である。例えば、システム毎に形式がバラバラであったり、手入力が残るために入力ミスが起きていたり、自社製もしくはベンダー独自のプロトコルしかなく外部へのインターフェースが無い、というようにため込んだデータの活用を想定していないシステムをコスト優先で構築してしまった際に多い。
スマート工場の取り組みで重要なのは、データ取得後のシステム間の連携を見据えたデータ管理の仕組みを構築することである。そもそも1社のシステムで全体をカバーすることは無いといってよく、異なるメーカー間でデータ交換ができることは必須である。そのためにもデータ形式を統一するか、少なくとも相互に変換可能にするべきであり、連携の際のプロトコルはOPC-UAやREST APIといった、業界でも標準的に使われているものを採用するべきである。できる限り手入力のかわりにセンサーや機器といったシステムでデータを取得することで、入力ミスを排除すべきである。データの取得段階から、そのあとの活用を考慮してシステムを構築しておくことが肝心である。
<経験と見解>
IoTを使って生産性を向上したいとか、品質改善をしたいといったニーズが広まってきています。自動化設備や製造工程の状態をセンシングした情報を一元的に集約する場合、最初にぶつかる問題の一つとして、データ形式、フォーマット形式があります。
もともと、設備はそれぞれの主目的のため(位置決めのため、搬送のため、一定温度に保つためなど)に存在しているのであって、そこから生成されるデータはどのように使うものかを明確に示していません。ましてや標準化された統一のフォーマットに則って生成されているものは、ほとんどないと思います。
そこで各設備から生成されるデータを統一する、ゲートウェイといったソフトウェアが市販で提供されています。一般的には、各設備から生成されたデータは、このゲートウェイを通ってデータベースに格納されます。そのデータを使って各種の分析、解析を行います。しかし、この市販のゲートウェイは限られたメーカーの設備でないと、データを変換して統一フォーマット化できません。現状製造ラインで稼働している旧式の設備の場合には、設備ごとにゲートウェイを作る必要があります。工場の情報システムの部門で対応できる場合は問題ないと思います。
№062のレトロフィット技術の中で紹介したAMR(アナログメーターレコグナイザー)を使うといった考え方もあると思います。AMRは旧式設備のアナログメーターをカメラで撮影し、デジタルデータ化して統一データ形式で出力します。それがどのメーカーの円形針メーターであっても、7セグ表示器であっても、フロートメーターであっても同じ形式で出力されます。言い換えれば、設備メーカーや、設備の新旧に依存することなく必要なデータを収集すれば、統一データ形式でデータベースに格納できることになります。ゲートウェイの機能は必要なくなります。
ものづくりの現場においてシステムを構築する場合、ものづくりに必要な本来の機能性能でシステム化をするか、IoT、AI優先でシステム化するかは、国際標準に従うか、デファクトスタンダードに準拠するかと同じくらい悩ましい問題だと思います。
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