123 IoT・AIを導入する前にすること

 IoT・AIを導入する前にすることとして、NTTコミュニケーションズ㈱の境野 哲氏は「IoT・AIを導入・活用するための要点と今後の課題」という記事の中で言及しています。(技術情報協会出版書籍) ここでその1部を取り上げ、自らの経験と見解を記載したいと思います。

<記事の抜粋>

 IoT・AIを導入する前に必要な改革を実行する:IoT・AIの活用によって大きく効果を見込めることがわかった場合でも、従来の業務プロセスを温存したままIoTやAIで省力化や自動化を進めるのは、必ずしも得策とは言えない。業務の一部を単純にIoT・AIで置き換えることよりも、業務の内容や手順・ルール・分業体制などを変えることで、より大きな生産性向上が見込める場合も多いからだ。

 IoT・AIといったテクノロジーを現場に導入する前に、改善の対象としている業務が、5年後10年後、第四次産業化革命による産業の自動化が進み、SDGs達成のための政策転換などが行われた後も価値ある業務として自社に残しておくべき業務なのかどうかを冷静に見極める必要がある。もし自社に残しておく価値がないと判断されるのであれば、IoT・AIの導入の投資をするよりも、早めに業務を社外にアウトソースした方がよいかもしれない。

<経験と見解>

 業務の一部を単純にIoT・AIで置き換える例の1つとして、製造ライン最終工程の官能検査の自動化がそれにあたると思います。キズ、コンタミ、フクレなど人の官能に頼った作業の自動化はなかなか進みませんでした。IoT・AI 技術の進展で最近実現されてきています。そこでの効果は人手作業を自動化することによる労務費削減でしょうか。投資との差し引きを考えると得策ではありません。

 一方、官能検査で不良とされるキズ、コンタミ、フクレなどをIoT・AIを使って原因を探り対策すれば、製造工程内の歩留まりは改善され、最終検査工程の負担も大きく軽減されます。自動化の効果を労務費削減に置くのではなく、官能検査結果のデータの収集といった位置付けにすることです。この結果のデータを目的変数として、製造過程のデータをIoTで収集して説明変数とし分析し不良原因の特定や予測をすることで、継続的な効果につながります。

 プリント基板製造の工場を対象に、データ活用のフィージビリティースタディーを1年ほど実施した経験があります。その中で大きく2つの課題がありました。1つ目は収集するデータのフォーマットがまちまちで統一する必要がある点。2つ目はIoT、AIを使って原因分析、予測分析をする必要がある点です。いずれも外部に依頼する場合には、依頼先はデータサイエンティストになりますが、彼らは個々のものづくりについては専門家ではありません。したがって、データの意味合いについて何度も、ものづくり現場の専門家とすり合わせする必要があります。工場が海外の場合はかなり大変になります。

 データサイエンティストがものづくりを理解することには限界があります。また、データを部外へ持ち出す点も工場にとって大きなリスクです。したがって、ものづくり現場で先の2つの課題に取り組むことになりました。幸いF社から、ものづくり現場で使えるIoT、AIツールが提供されていましたので、その機能ベースで品質改善が回る仕組みと体制を構築しました。ツールの詳細についてはブログ№114 №115を参照ください。

SHIMAMURA ENGINEERING OFFICE

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