100ものづくりのIoTデータ
最近、ものづくりの現場においても、データ活用、デジタル化、IoTといった言葉をよく耳にします。大手情報通信メーカーは、以前より金融機関、商社と連携して大規模な情報・通信システムを構築して、データ活用、デジタル化を実現してきています。おかげでネットバンキング、ネットショッピングといったお馴染みのサービスが提供されるようになりました。金融機関や商社が取り扱っているデータは人が作り出したものです。それをデータベース化し、統合分析することで新しい価値を生み出してきました。一方、ものづくり現場の場合はものづくりの状態、環境をセンシングして同じくデータベース化し、統合分析します。
ここで大切なのは、自然現象、物理現象をセンシングしてデータ化するといった点です。たとえば、自動車の走行距離(移動距離)を測定し表示するトリップメーターの場合はどうでしょう。一般的なトリップメーターの値は自動車のトランスミッションのギアの回転数を読み取り、最終出力のタイヤまでの伝達系の回転速比から計算します。したがって、タイヤの径の変化や、走行環境(ウェット、ドライ、ダート、舗装)の違いにより走行距離に誤差が生じます。2割程度の誤差は通常出てしまいます。モータースポーツのラリーなどは、試し走行をして、オフィシャルの測定値と、自車の測定値の違いを計算し、補正します。
たとえば、化学反応により製品を作るプロセス工程の場合は、温度管理が重要となります。大きな液槽の1箇所だけの温度を測ってデータとすることもあります。温度が均一になるように設備には攪拌装置が付いていますが、少なからず誤差はあるはずです。メッキの場合には、温度が1℃違うだけで、生成速度が数倍変わります。同じことは高温で原料を溶解する炉にも言えます。
たとえば、組立ロボットは位置決めにカメラを使います。カメラは照明の変化でデータ値が大きく変わることがあります。これも誤差です。
したがって、センシングしたデータはそのまま使うことはできません。外乱などで発生する誤差を取り除く必要があります。工場でデータを活用して不良予測や故障予兆をする場合、誤差のある状態ではその精度を高くすることはできません。今後、ものづくり分野においてデータ活用、デジタル化を進めるに当り、最大の課題だと思います。誤差を如何に少なくするかは、システム屋にはできません。ものづくりを理解している現場のエンジニアが必要です。
以前、ロボットシミュレータが出始めた頃、シミュレータ上は間違いなく動作しているのに、ロボットがちゃんと動作してくれないのです。といった話を聞いたことがありますが、リアル世界、自然界は誤差だらけです。
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