101 AIによる自動検査をする前に
多くの製造工場において、最終検査工程で製品にキズ、異物付着、汚れ、フクレ、光沢ムラがないか作業者が目視で確認しています。人手に頼った、いわゆる官能試験はどうしても検査ミスが発生し、顧客先に不良品を出す可能性があります。そこで自動検査のシステムを導入することになります。
一般に目視による官能試験の自動化にはカメラが使用されます。そのカメラの弱点は照明です。環境変化による明暗の違い、対象物がおかれている位置の微妙な違いによる色合いの変化などの外乱により、誤検出が発生します。そこで、不良を出さないように検査結果がグレーなものはすべて不良として処理されます。結局グレー判定の製品は人により再検査されます。
そこでこの自動検査システムにAIを適用し、誤判定を低減させようといった考えが出てきます。実際、世の中にはこの種のシステムがすでに多く使われています。課題は膨大なデータを使ってAIに教育する必要があることです。最近の様に多品種少量生産の場合は、キズ、汚れなども多種になり教育用の資料を集めるだけでも大変です。当然、AIに教育するエンジニアも必要となります。エンジニアはものづくり技術とデータサイエンティストを兼ね備えたスキルが必要となります。
AIにより検査精度が向上しても、大きな問題があります。それは、工程内の歩留まりは改善されないといった点です。膨大なデータがあり、AIエンジニアがいるのであれば、教示データを目的変数にして、製造工程の管理項目の条件や状態を説明変数にとって、不良発生の原因をAI分析し、対策を立てることができると思います。対策により不良品がなくなれば工程内の歩留まりは向上します。最終検査もその必要性を失います。せっかく導入したAIによる自動検査システムも必要性がなくなります。
かつて、ロボットを導入して作業者を削減しようと取り組みをしたことがあります。ロボットが導入できるように、既存のラインを見直ししたら、ロボットを導入しなくても作業者が半減したといった経験をしました。IoT AIの導入の際も同じことが言えると思います。
自動組立の権威である牧野先生の著書には「自動組立は組立の自動化ではない、組立を自動化するために何かをすることである」と書かれています。最終検査を如何に削減するかを考えることは、AIによる自動検査の大切な取り組みの1つだと思います。
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