099製造工場のIoT

 日刊工業新聞社出版の「中小企業が始める!生産現場のIoT」の中にIoTで工場管理のレベルを上げる10箇条について記載がありました。ここでは、以前IoTの活用促進のため、あるプロセス工場をモデルに取り組んだ内容を、10箇条に当てはめてみます。

 ①情報を集めて何をしたいか考えよ・・・各製造工程ではQC工程の管理の下、日々活動をしているにも関わらず、年に1回レベルで大きな品質問題が発生する。多因子が絡みあうことが原因と考えられている。IoT、AI技術を使って、問題を未然に防止するようなシステムを構築したいと考えた。

 ②集めたデータを蓄積する場所、データベースを確保せよ・・・従来データは製造設備のハードディスクの中や、各セクションのファイルサーバの中に散在していた。遊休のノートPCを使ってデータの一元化ができるようにした。

 ③既存設備のログデータを自動で集めよ・・・製造設備の中に蓄積されていたデータは、以前は品質問題が発生した時にUSBメモリを介してパソコンで解析していた。今は、設備のUSBの口と前記ノートPCをLANでつなぎ、いつでも参照できるようにした。

 ④既存センサーからデータを自動で集めよ・・・通常、温度、圧力、電流などのデータはアナログメーターに表示された数値を作業者が読み取り、データシートへ転記していた。新たにアナログメーターをカメラで読み取り、デジタルデータに変換してデータベースへ格納する一連の作業を自動で行うシステムを考え、実証実験を実施した。

⑤既存文書データからデータを自動で集めよ・・・データはセクションごとに不揃いのフォーマットで管理されていた。データ統合、分析ができる統一フォーマットを作成し、データベースへ格納した。

⑥既存のデータベースと自動連係せよ・・・工場内には進捗管理や稼働管理のシステムがあり、将来的に品質管理のデータベースと連携し時系列に関する統合が自動的にできるシステムの構想がある。

⑦既存で足らない部分を、格安で実現する方法を考えよ・・・アナログメーターの場合、作業者が1日数回程度監視するレベルであったものが、カメラで読み取るシステム(Analog Meter Recognizer)を導入することで、1分に1回レベルのデータの収集が可能となる。

 ⑧集めたデータを集計して”意味あり”情報に変えよ・・・製品ロットごとにデータを紐付けして、要因データ、結果データを使って品質予測モデルを作成した。このモデルを使って現状流れている加工物の製造条件、状態を入力することで、最終検査工程を待たずしてOK、NG判定を予測できる仕組みを構築した。

 ⑨”意味あり”情報をもとに行動せよ・・・品質予測に基づいて、工場全体をPDCAサイクルで回る仕掛けを構築した。予測結果から、今後歩留まりが改善方向に進むか、目標値を下回るかなどが見え、ネックとなる工程も見えるようになる。ただ、現状はまだ予測精度が実運用で必要とされるレベルに至っていない、予測精度向上が近々の重要課題となっている。

 ⑩決まった行動ルールは自動化せよ・・・上記課題の対策後、自動化へ進む。

 以上、以前取り組んだIoT活用促進の取り組みは、10箇条にマッチングしていると思います。残る課題は予測精度の向上です。収集するデータの品質向上が鍵を握っていると考えています。

SHIMAMURA ENGINEERING OFFICE

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