097旋盤とIoT
旋盤という工作機をご存じでしょうか。人形のこけしを製作している場面を幾度かテレビで放映していたことがあります。そのこけしの製作に使われる加工機械が旋盤です。こけしの場合、材料は木ですが、通常工場では円柱の金属を使います。材料を高速に回転させて、バイトという刃物で回転している材料を削ります。最も基本的な汎用工作機の1つです。
旋盤は主軸部、刃物台、心押台などの要素で構成されます。主軸部は加工物を取り付けるチャック、チャックと加工物を回転させる軸とモータで構成されます。取り付けられる材料の径、種類に合わせて、何段階かに回転速度を設定することができます。刃物台にはバイトが取り付けられます。通常バイトは4個まで取り付けることができ、加工する箇所に合わせ容易にバイトの種類を交換することができます。刃物台自身はXYステージ上に搭載されており、回転している材料の長手方向と中心へバイトを移動させることで、切削します。一般に材料は片端をチャックして、片持ち状態で加工しますが、材料が長い場合は、もう一方の端を心押台で支えます。
大学の卒論のテーマが「旋盤の剛性について」でした。円柱状の金属を旋盤で加工すると条件によって、円周上の表面に周期的な鱗状の模様が現れます。いわゆるビビリといった現象です。表面粗さ、寸法精度には問題がないのですが、見た目が良くなく商品価値としては下がってしまいます。卒論ではこの原因調査がテーマとなりました。ビビリ現象は旋盤自身または材料が持っている固有振動数と関係があると仮設を立てて、調査しました。
旋盤の主軸部、刃物台、心押台の周辺箇所をインパクトハンマーでたたいて、固有振動数を測定しました。材料については形状、ヤング率と質量が分かっていたので、計算で求めたと思います。原因は刃物台に絞られ、モデル化し検証しました。刃物台にはバイトが取り付けられていますが、バイトの突き出し量でその系の固有振動数が変わり、突き出し量によってビビリが発生したと結論付けたと記憶しています。
ものづくりをする中で、顧客の要求仕様を満足しているにも関わらず、見た目、見栄えが良くなく商品としての価値が下がってしまう場合があります。(曲がったキュウリは、新鮮さ、味に問題がなくても消費者からは敬遠されます) 今まで、IoTに必要となるセンシング対象として、温度、圧力、電流、位置誤差などを考えていましたが、見た目、見栄えなどを含めて改善対象とすると、製造設備の諸元、材料の諸元や治具、工具の取り付け誤差なども対象にしていく必要が出てくると思います。
大切なのは、対象となる不具合がなぜ発生するか、その仮設をきちっとたてて、そこに登場する要因をセンシングすることだと思います。
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