092自動組立ライン

 90年代後半の話になります。ハードディスクドライブの自動組立ラインを開発して、フィリピン、タイの工場へ導入した経験があります。当初回りの人達から、「人件費がかからない東南アジアで自動化の必要性があるのか」といった声がよく聞かれました。最終組立工程において、自動化を進めても人を削減することは難しいものです。目的は人件費の削減ではありません。組立を行うオペレータが減ったとしても、自動化設備ロボットをチューニングし、メンテナンスし、機種変更に対応する技術者が逆に必要となります。

 最終組立工程の自動化の本来の必要性は品質改善です。ハードディスクドライブの組立環境(クリーン度)が年々厳しくなってきていました。製造工程内のコンタミ、発塵による品質不良を削減するため、自動化が必要です。人が部品に触ればコンタミの原因となり、人が動けば発塵します。コロナウィルスに似ています。自動組立ラインの基本構成は①組立パレット ②フリーフローコンベア ③パーツ供給 ④組立ロボット ⑤エンドエフェクタ となります。 以下、機能と特徴について記載します。

 ①組立パレット:ハードディスクドライブの被組み付けワークであるDE(Disk Enclosure )を搭載して各工程へ移動するパレットで、各工程でNGが発生した場合、フラグを立ててNGを知らせる機能を持っています。前工程でNGフラグがたつと以降の工程はスルー(無作業) となります。

 ②フリーフローコンベア:連れまわりタイプのコロを使った搬送コロコンベアで、ストッパによって各工程の手前で組立パレットを停止させる機構と、数枚のパレットをアキュームする機構があります。次工程の作業が終わると、ストッパが下がりパレットを1枚だけ搬送させることができます。組立作業位置に搬送されると2番目のストッパでパレットを停止させ、下からリフターでパレットを持ち上げ、コロから分離し、位置決め固定を行います。この状態で組立ロボットの作業が行われます。作業が終わるとリフターが降下し、パレットをコンベア上にリリースします。パレットは次の工程に搬送されます。

 ③パーツ供給:作業者が部品をトレイに整列させ、そのトレイをロボットへ供給します。ロボットと作業者はクリーン度と安全性の確保のため、完全に分離されています。トレイの出し入れは、上下2段の引き出しタイプまたは、回転テーブルタイプのローダー&アンローダーで行います。

 ④組立ロボット:直交ロボット、SCARAロボットによるピック&プレイスで各工程の組立を行います。組立は円板(媒体)の搭載、円板ネジ締め、バランス測定とカウンターウェイトの装着、円板バーニッシュ(磨き)、ヘッドユニット挿入、カバー搭載、カバーネジ締めの7工程です。カバー搭載を除いた6工程が全自動です。

 ⑤エンドエフェクタ:円板の内輪を吸着するハンド、円板固定用のスプリングプレートの把持する機構と6本のネジを吸着してネジ締めする機構を一体化させたハンド、Cリンク形状のカウンターウェイトを把持するハンド、フレキシブルプリント板と一体となったヘッドユニットを把持しネジ締めするハンド、7軸同時ネジ締めツール 以上を各工程のロボットに搭載しました。

 まとめると、工程間の移動、各工程の作業を自動で行います。人は各工程の部品の整列と供給を行いますが、ラインとは完全に分離されています。以上の構成で、クラス20のクリーン度を実現することができました。ラインのタクトタイムは20秒で従来のマニュアルラインと同じレベルです。

 あらためて思うことは、人にはできないことは自動化せざるを得ません。スピード、精度、環境(クリーン、放射能、高温、高所など)、24時間稼働など 将来の姿を見通して、早めの検討が必要です。

SHIMAMURA ENGINEERING OFFICE

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