091実装組立系工場のIoT(その2)

 以前、SMTラインの設備のチョコ停をビッグデータで分析したことがあります。その工場にはSMTラインが全部で9ライン稼働していましたが、1ライン当たりチョコ停で1日1時間ほどの停止が発生していました。工場全体では8~9時間停止している計算になります。言い換えると1日1ラインが稼働を停止していることになります。

 原因分析の依頼を受けた生産技術部隊は、当時バズワードになっていた「ビッグデータ」を使って分析を試みようと考え、データサイエンティストと協力してプロジェクトを立ち上げました。先入観、既成概念、様々な予見に左右されないように、現場の知見を入れることなく、データから見えてくるもののみで分析を進めることを方針としました。当時SMT設備が保有しているデータは稼働データ、エラーデータ、イベント情報などが主でした。対象となっていた工場は、データの管理が一元化され整理されていたこともあり、サイエンティストが要求する形式でデータを提供できていたと思います。

 分析の結果、あるチップ部品の形状が当初想定していたものと違っていたのが原因でした。そのためロボットのエンドエフェクタ(吸着コレット)で安定して部品を把持できず、チョコ停が発生していたのです。一見、ビッグデータで分析したことで発見された事象のように見えますが、実は部品の形状などは工場側で事前に調査する必要があり、それを行っていなかったために明らかになった結果です。重要なのはビッグデータ分析、AI分析を実施する前に、当然明らかに原因の因子になるものは対処しておくか、その項目のデータは含めないようにする必要があります。分析には多くの時間と工数がかかります。

 このプロジェクトを通して、もう1つ重要な事が分かりました。収集したデータのほとんどが、どのようなエラーがいつ、どの程度発生したかというものと、チップ部品、プリント基板の機種に関するものでした。実装組立系の重要な管理項目として位置決め誤差、位置合わせ誤差があります。誤差の積み重ねが組立不良となります。SMTラインにおいても、プリント基板の誤差、位置決め誤差、チップ部品の誤差、位置合わせ誤差などのデータがあるはずです。このプロジェクトでは誤差データは含めていませんでした。あとで分かったことですが、SMT設備の中に蓄積されているデータは、ユーザーに開示できるデータと開示できないデータ化(SMTメーカーが使うデータ)の2つがあるということです。先ほどの稼働データは開示データであり、開示できないデータの中に、設備の位置誤差などのデータがあったのではないかと思います。

 この位置誤差のデータが入手できると、先ほどの組立不良の発生関係も分析できるので、ぜひ入手したいデータの1つです。IoT AI化さらにスマート工場化を進めるに当り、メーカー側の協力が必要だと思います。

 さらに、このメーカーが持っているデータを分析することで、SMT実装ロボットのワークエリアの中でどのエリアが位置決め誤差が少なく、どのエリアが位置決め誤差が多いかもわかります。(ロボットの位置決め精度はワークエリアで違います) 高精度の実装が必要な場合は、ロボットの位置決め精度の良いエリアで行えばよいことになります。ユーザー側が設備をチューニングする場合にも必要になるデータです。ブログ№029DTF開発コンセプト②高精度位置決めエリアの選択とそれを応用したピック&プレイス機構で説明されています。下記を参照ください。

 参考資料

https://www.fujitsu.com/downloads/JP/archive/imgjp/jmag/vol56-6/paper08.pdf

SHIMAMURA ENGINEERING OFFICE

ものづくりの普遍のテーマに取り組んできた生産技術者の備忘録です。 スマート工場に向けた自動化、IOT、AIの活用について記載しています。 ご相談は下記のシマムラ技術士事務所へ。 It describes Automation and IoT/AI for smart factories. For consultation, please contact the following office.

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