086自動化の要素技術

 難易度が高い自動化の要素技術として、ビンピッキングと柔軟物のハンドリングがあります。ビンピッキングについて、自動組立の権威である牧野先生の著書に次のような記載がありました。「パターン認識の中でも難しいとされている問題の1つにビンピッキング(bin-picking)がある。これは容器(bin)の中にばらばらに(ランダムな位置と姿勢)で入っている部品を認識して1つずつ取り出そうという問題である。~中略~ 世界の大勢のビジョン研究者がこの問題に取り組みそれぞれのアルゴリズムを発表している」。いろいろな制約条件の下にだけ成立させることができる難易度が高い問題です。

 柔軟物ハンドリングは、例えば電子機器の組立においてケーブルの配線や、フレキシブルプリント板が一体となった部品の組み付けがあります。やはりビジョンを使ってある制約条件の下で、組み付けができる場合があります。

 組み付けのスピードや信頼性を考えると、ビンピッキング、柔軟物ハンドリングのいずれの場合も量産製造ラインへの適応は難しいとなってしまいます。

では現場でどのように対応したか、ハードディスク組立の例でみてみます。この組立工程の中にカバー(蓋)取り付け工程があります。主作業は7軸同時ネジ締めです。ハードディスク本体のケースとカバーの間にゴムパッキンを挟んだ状態でネジ締めを行い、トルクのばらつきは10%程度に抑えることを要求されていました。自動ネジ締め機7台をネジ締めのポジションに配置した一体型のハンドをロボット先端に取り付け、7つのネジを同時にピックアップしてネジ締めを行うまでの動作をさせました。課題の1つがネジの供給方法でした。

 7台のネジ供給機(ネジッコ)を使う方法もありましたが、コスト面、信頼性の面で、治具によるネジ振込方式を採用しました。振込方式とは、A3程度の板金にカバーネジ締めと同じポジションにバカ穴を7つあけて、その7つの穴を1つのパターンとして10㎜間隔で20セット計140穴をあけます。その穴があいた治具の上にばらばらのネジをばらまき、振るいをかけるとネジの首下が穴に入り、ネジ頭だけが見える状態になります。この治具のままロボットに供給します。当初、人手による振り込み作業でしたが、最終的には自動ネジ振込機を開発しました。

 同じく、ハードディスク組立工程の1つにヘッドユニットのロボットによる組み付け工程がありました。媒体のリードライトをするヘッドユニットにはフレキシブルプリント板が一体となっていました。位置、姿勢がままならないこのユニットは、作業者が事前にフォーミング治具にセットし、位置、姿勢を強制します。治具はヘッドユニット10個を搭載することができ、そのままロボットに供給します。ロボットは強制されたヘッドユニットの形を崩すことなく把持できるグリップ(把持機構+吸着機構)でピックアップし、組付けします。

 ビンピッキング、柔軟物のハンドリングは今後も研究されると思います。が一方でネジがない製品技術(例えば接着技術)や柔軟物のケーブルがない製品(例えば無線技術)も研究されると思います。どちらも自動化に向けた要素技術であることに違いはありません。

SHIMAMURA ENGINEERING OFFICE

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