085マスカスタマイゼーション
マスカスタマイゼーションという言葉を聞いて久しくなります。マスカスタマイゼーションとは、顧客の個別要望に応えるカスタムメイドやオーダーメードの特徴を、大量生産(マス生産)のコンセプトを取り入れながら低コストで実現しようとする考え方、個々の顧客のニーズに合わせた多品種大量生産のこととあります。(ex. Buzz wordsから) スーツなどのイージーオーダーやPCのオンラインショップなど、顧客の選択肢をあけ程度限定し、その組み合わせによって顧客の要望にできる限り応えようとするものです。
PCの生産(組立)を例にマスカスタマイゼーションを考えてみます。PCは板金加工部品、樹脂成型部品、プリント板ユニットやディスプレイ、メモリ、ハードディスクなどから構成されています。生産の大きな流れは、①購入品の受け入れ検査 ②加工・成型・実装 ③総合組立 ④出荷検査 ⑤梱包 ⑥仕分け配送 です。
PCのフレームとなる板金部品は、金型を使って金属の板材を切断、穴抜き、折り曲げ加工をプレスで行います。外形のカバーとなる樹脂成型部品は、樹脂のチップ材を溶かし、金型に射出して成型します。チップ実装では、プリント基板に電子部品(チップ)をSMTほかの設備を使って実装し、マザーボードなどのプリント板ユニットにします。ディスプレイ、メモリ、ハードディスクなどは購入品です。それぞれのリードタイムを調整するため中間ストアに集約します。
総合組立では、これらの部品やユニットを顧客の要望に応じて組み立てていきます。ユニットの種類、色の種類、インターフェースの種類など組み合わせによって、数百、数千の品種になります。当然、同一製造ライン上に異品種を流す混流生産になります。検査工程も混流となります。梱包はPCの外形などが同じなので、作業としては共通化が可能ですが、ラベルの貼付、説明書の添付はやはり個別対応となります。
以上の取り組みを実践しているあるPC工場では月産20万台レベルを達成しています。ポイントは混流生産にあります。複数本あるある製造ラインで同じ様に生産するためには、オペレータの教育と組立治具の開発が重要です。オペレータは目の前の作業を指示書通りにムダのない動きで正確に組み立てていきます。それは、まるでピアニストが鍵盤を目で追うことなく、自然と指が鍵盤を這い演奏する様な動きです。また、組立品質を安定させる組立治具、設備のチューニングも日々取り組む必要があります。
残された課題は変量への対応です。PCのようにボーナス商戦に対応しないといけない製品は年間を通してみると月当たりの需要の差が大きくなります。閑散期になにをするか。オペレータのトレーニング、改善活動、治具、設備のチューニングなどがありますが、やはり新規需要の掘り起こしが必要となります。混流ができる工場であれば、他社の製品はもちろん、PC以外の製品、マスクやフェースシールドも生産できると思います。そのことに早く気付くことが重要だと思います。
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