078自動化・AIとオペレータ
90年代にハードディスクの自動組立ラインを開発して、タイ、フィリピンの工場へ導入した経験があります。導入の前に国内の製造拠点で、このラインの機能・性能を評価しました。自動組立ラインといっても自動化のメリットがない工程はマニュアル作業となっていました。このラインの中に、ハードディスクの円板(媒体)が回転する時のバランスを測定して修正する工程がありました。アンバランス量とその位置の測定は自動で、カウンタバランスのおもりを貼り付ける作業はオペレータが行います。
ある日、そのバランス工程で円板を回転させ測定していた時、オペレータから円板に傷があるとの知らせが入ってきました。生産技術、製造技術のメンバーがその円板を確認しましたが、見つけることができませんでした。念のために、工具顕微鏡で覗いてみると、オペレータが言う通り、微小な点を円板上に見つけることができました。回転している円板から何らかの異常を感じ、目で見て確認したとそのオペレータは話してくれました。そのオペレータは入社して4~5年の女性でした。目がいいことは確かですが、回転している円板が通常と何か違うと感じた点に驚かされました。さらに感心したのは彼女の作業は円板の傷を監視することではありません。カウンタバランスを貼り付ける作業です。品質改善に向けたマインドがそうさせたのだと思います。
今、世の中はものづくりのスキル、ノウハウをロボット化、AI化させようとしています。人間の潜在能力、仕事への取組み姿勢などは、ロボット、AIには当分できないと思います。
一方、ロボットはロボット、AIはAIで人間には到底できない能力をもっています(スピード、正確さ、耐久性など)。この能力は引き続き飛躍的に伸びていくと思います。ロボット・AIと人間のすみ分けをはっきりさせて、共存させていくのが、技術屋の使命だと思います。
今までに、いくつかの製造ラインの自動化を推進してきましたが、すべてマニュアルラインが先にあって、それを自動にしてきています。(マニュアル作業が効率よくできる治具の開発が先にあって、自動化はその治具にモーターを付け制御するだけです)。自動化ラインができたからマニュアルラインがなくなるか。実は工場には必ず1ラインはマニュアルラインがあって、そのラインで改善の取り組みや、効率的な治具の開発、工法開発を行います。これは時期製品のための取り組みと同時に、人間のスキルアップ、ノウハウ蓄積となります。すでに多くの現場では、この考えかたが定着しています。
ロボット、AIに教育するのは人間が先生となります。その先生がいなくなれば、現在のロボット、AIは育たなくなってしまいます。ベテラン、匠がいなくなれば、やはりそのものづくりはそこで終わってしまうのだと思います。
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