070食品製造業界(その1)
スマート工場化に積極的な大手菓子メーカーのL社の取り組みについて、添付参考資料を基にして考察します。
衛生面や品質面で厳しい管理が必要とされる食品製造業界は、プロセス系を中心とした製造であり、自動化が進んでいる分野です。一方で、実際のオペレーションとなると、ベテランの技術者の設備のチューニングに頼るところが多いとのことです。L社も同じく、これに関連して人手不足、品質の安定化と食品ロスの低減といった課題を持っています。
L社では既に15年前から、ネットワークを構築して、すべての設備をつないでデータを収集し、分析する姿を理想の工場として描いていました。当時は手軽に現場で使える技術がそろっていなかったため、十分な推進活動ができなかったとのことですが、現在はIoT、AIとも身近になってきたため、2017年から、理想とする工場に向けて、本格的に取り組み始めました。
L社は取り組みのポイントを2つ挙げています。1つは原料などのばらつきに対応しなければならない機械の調整を、従来は属人的な対応で行ってきましたが、それをデータにすることで「品質の安定化」を図る点です。もう1つが機械異常などによるライン停止に関して、トラブルに素早く対応し回避する点です。
L社は実現に向け、対象製造工程にM社製のリアルタイムデータアナライザを導入しました。対象製造工程はアイスクリーム(雪見だいふく)の生産ラインで、6つの工程があります。①アイスミックスの混合・均質化 ②アイスミックス熟成 ③おもち蒸・練 ④包餡 ⑤包装・急速冷凍 ⑥梱包 となっています。
製品の品質安定に重要な工程が、もちの工程であるため、もちの仕込みから、包餡工程に温度、振動、圧力、電流センサーを追加して、もちの仕上がりに関するデータをリアルタイムデータアナライザで収集しています。より品質の良いデータの収集、要因分析、AI分析しリアルタイムでフィードバックをする方向で取り組んでいます。また、最終的には自動調整ができるようにしたいと考えています。
以上、現在L社で取り組んでいるIoT、AIの活用ですが、3つのことが言えます。
1)データ活用の取り組み手順は、本ブログ061データ活用の取り組み(その2)とほぼ同様です。データの診断、収集、統合、分析、運用です。
2)より品質の高いデータの収集が、正しい分析結果を導き出す鍵となります。本ブログ062レトロフィット技術(その2)を参照してください。要因と思われる工程のデータリッチ化(データ量、サンプリングレート)が重要です。
3)データの統合、分析はパートナー会社との連携が必要となると思います。ものづくりは各社のプロダクトの違いによってパートナーやIoT、AIのツールが変わりますが、データのリッチ化とトレーサビリティは必須条件となります。早め早めの準備が重要だと思います。
参考資料
https://www.mitsubishielectric.co.jp/fa/compass/casestudies/custom/ccase43/index.html
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