062レトロフィット技術 (その2)
レトロフィットとは「既存の劣化した機械を修理して、精度や性能を新品同様に復元するだけではなく、最新の技術、先進NC装置、機能を付加して最新鋭機にチューニングすること」です。(日高グループ工作機械のレトロフィットとはから引用)
たとえば、旧式のフライス盤は刃物の切り込み量を設定する場合、工作物を固定するベッドについている回転式のダイヤルを、読み込まなければなりません。大変であると同時に、間違いも多かったと思います。この旧式のフライス盤に、リニアスケールというミクロンオーダーを計測できるユニットを取り付けるだけで、計測値をデジタル表示することも、その値を外部へ吐き出すこともできます。プロセス系の工場は、単一製品を長期にわたり生産するため、製造設備を入れ替えることはめったにありません。したがって、旧式の設備が多いのがプロセス工場の特徴です。
あるプロセス工場で、データを活用して製造品質を予測したことがあります。旧式の設備でデータの保存機能がなく、作業者がアナログメータ―を読み、数値を書きとっていたり、データを自動的に保存する機能がついているものの、必要とされるデータがないものであったり、データの棚卸をしてみると、いろいろと見えてきました。
トライアルで既存のデータをクレンジングして、分析ツールで機械学習させました。そこで生成された予測モデルを使って、製造途中のデータをモデルにインプットしてみました。アウトプットされる品質予測結果は、天気予報の晴れか雨か、回復か崩れるかと同様に品質はOKかNGか、改善の方向か劣化の方向かといった具合で表現されます。実際の結果と比較してみましたが、正解率は実際の品質改善活動をするには、十分といえる結果ではありませんでした。
ここで使用されたデータのなかには、1日2,3個しか収集されていない工程もありました。1日100ロット流れる製品のデータとしては明らかに不足していると思います。その工程の1つとして定温槽がありました。この定温槽のアナログメータへカメラを設置し、24時間撮影しAMR(アナログメーターレコグナーザー)というツールを使い1分間隔でデータを収集してみました。その結果、定温槽を一定に保つサーモスタットのスイッチングの様子や、定温槽に日に1回投入される薬液の影響で温度が変化すことが分かりました。1日の温度変化の詳細データを使えば、予測の精度も改善されると思います。
AMRは旧式設備や人手によるデータ収集を大幅に改善するいわゆるレトロフィット技術の1つであり、プロセス工場のデータ活用に大きな役割を果たすと思います。
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