057たった1つでも標準化
新しいシステムの開発、新しい設備の開発、あたらしいプラットフォームの開発など、技術者にとって最もモチベーションが高くなる業務テーマです。技術者の創造力、技術力を十分発揮しようと思う一方で、勝手に作っていいのか、世の中の流れに沿ったもの、いわゆる標準化に沿って開発するべきか、まだ世の中に標準なるものがない場合はどうなのか、などと葛藤しながら、結局好きなように開発してしまうのは技術者の性なのでしょうか。自動組立分野の世界的な権威で、SCARAロボットの産みの親である牧野先生の著書の中に、たった1つでも標準化といった記事があったので紹介します。
設計者が個々に好き勝手に自分の気に入った構造や寸法を採用していると、機械や部品の種類は設計者のムラ気の数ほどに多くなってしまう。
そんなときに効果があるのは標準化である。たとえば、ねじの径は3ミリ、4ミリ、5ミリ、6ミリ、8ミリというように決めておき、3.5ミリ、7ミリだのは使わないようにする。
自動組立機械は専用機である。ということは、つまり、何を組み立てるかということが始めに決まってから設計するわけだから、放っておけば1台1台が皆格好の違う機械になってしまう。そんな中で、アメリカ製の機械は標準化が進んでおり、A社に機械はこのタイプ、B社の機械はこのタイプ、とそれぞれの特徴を持っている。一体どうやってその標準ベースをムラ気の多い設計者に押し付けるのかと不思議に思っていた。
たまたまアメリカに行ったとき、スワンソン・エリー社を見学する機会を得たので社長に質問してみた。同社は回転形や直進形のさまざまな標準ベースを持っている。
「いったい、この標準ベースは誰がいつ整理して図面にまとめるのでしょうか。」
この質問を受けたスワンソン社長はけげんな顔付きをした。
「最初1台注文を受けて設計するときには、それはもう標準品です。あとの人はなるべく前の人の設計したものを利用しようとしますから。だってその方が早く設計できるし、実証されているものを使えば確実ですから。」
これと同じ質問を日本の自動組立機械メーカーの社長に聞いたら、たぶん全然違う答えが返ってくるだろう。
日本で標準化の遅れている理由はこうした考え方の違いにあるものと思われる。
「裏返しのメニュー」情報調査会 から一部引用
次世代のスマートファクトリーやスマート社会に向けて、画期的な実績をひっさげたプロダクトやシステムがあって、認められ、自然と展開されるといった流れがないと、標準化は難しいのかもしれません。
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