038部品図のノウハウ
以前にもブログで書いたことがありますが、機械設計製図の手順は、案画→部品図→組立図で行います。この中で最も価値があるのが、部品図です。部品図は詳細な設計に基づいた寸法、公差、材料、処理、加工に当たっての注意事項などすべての情報が記載されています。
組立図作成中に部品の干渉チェック、組立性の検証がされ、不具合があれば版数を上げて修正、追加が行われます。さらに、試作、量産試作、量産での評価や仕様変更に迅速に対応して、版数は20版を超えることも稀ではありません。
こうして成長した部品図は、ノウハウの固まりであり、信頼性の高い製品を作る価値ある図面となります。外注に機械設計製図を依頼しても、よほどのことがなければ、部品図は提供してもらえません。
寸法、公差の数値を少し変えただけで、加工時間、精度、歩留まりが変わります。適切な処理を指示しないと、予想外に加工に時間がかかることがあります。以前、はめあい用の穴と挿入部品の表面処理に、電気ニッケルメッキ処理を行ったことがあります。この処理の一般的なばらつきは±0.02mm程度あります。はめあい公差が±0.025mmあったとしても、加工に残された許容公差は単純計算で±0.005mmとなり、旋盤加工では非常に難易度が高いものになります。
部品図に記載される注意事項には、下記のようなものがあります。
・鋳物は有害な巣・ピンホール・ブローホール等なき事…機械強度、密閉性の保持
・鋳物は機械仕上げブに2mmに加工代を設けること…加工ミスを避ける加工代の保持
・塗装は斜線部及び鋳肌面のみとする…外形形状の見栄えと機械精度の保持
・機械加工部の指示なき角は糸面取りを行うこと…作業の安全性保持
・機械加工部の指示なき隅Rは0.2mm以下のこと…組立精度保持
・(板金の場合)バリ、カエリがないこと…作業の安全性保持
などがあります。
会社に入って最初に機械設計者が行う作業は、ベテランが引いた案画の部品ばらしですが、寸法公差、材料選定、処理、注意事項はベテランの指示に従います。設計の経験、現場の経験を積んで初めて自ら記載できるようになり、一人前の機械設計者となります。
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