037鋳物3点盛り
自動化設備の開発・設計を進める中で、アルミ鋳物部品の設計も何度か経験したことがあります。①鋳物の肉厚 ②巣 ③一体化か分割化か の3点盛りで記載します。
① 以前、半導体の部品を接合するボンダ―という設備の開発、設計を手掛けたことがあります。ワークに対し半導体部品を、接着加圧または超音波によって接合する設備で、高精度の位置決めが要求されます。設備のベースフレームは高い剛性が必要となりました。
当時すでに構造体の強度や剛性に関する汎用のコンピューターシミュレーションは、設計プロセスに取り入れられていました。限られたスペース・重量で、最大剛性を持つ形状を算出した経験があります。シミュレーション結果を見てすぐ、これでは物が作れないとわかりました。鋳物は溶けた金属を型の中に流し込んで、形を作ります。鋳物の設計で重要なのが、肉厚です。
鋳物の肉厚はできる限り均一にして、どの部位も一定の冷却速度になるように考えなければいけません。シミュレーションで出した結果では、この点が考慮されていませんでした。鋳物の壁面同士が交差する場所が、道路で言うところの4差路、5差路といった形状のものが、ほとんどでした。これは何を意味するかというと、交差する点の肉が厚くなるということです。湯の流れ、冷却速度の点から均一強度の鋳物が作ることができない、ということになります。結局、交差は3差路にするように再設計しました。
ちなみに、鋳物専用のシミュレーションを使えば、このような結果にならなかったと思います。汎用シミュレーションを使う場合は、専門技術者が事前に条件設定する必要があります。
② ロボットの関節を開発していた時のことです。6自由度垂直多関節ロボット(6関節をθ1~θ6と呼びます)の先端側のθ5とθ6を一体化するケーシングを設計しました。鋳物の外観は塗装を施し、内側はθ5、θ6各機械要素(モーター、ハーモニックドライブ、エンコーダ)を取り付けるため、加工仕上げしました。θ5とθ6は鋳物で隔壁を作り分離させました。θ5のハーモニックドライブを潤滑するオイルが漏れないように、摺動部にはパッキンで封をしました。(ちなみに、θ6の潤滑はグリスでした) さて、ロボットが組み上がり、ランニングしている時でした。どういうわけかθ6の内部がθ5の潤滑オイルにまみれていました。
原因は、θ5の潤滑オイルが、鋳物の隔壁内部にある巣を伝ってきたことが分かりました。鋳物の巣は、液状のアルミが気泡を含んだまま固まってできます。巣が単独で存在する場合は問題ありませんが、気泡がつながってしまうと、通り道ができ、そこをオイルが伝わってしまいます。結局、鋳肌面に接着剤をしみこませ、対応したことがあります。
③ 設備設計する場合、すべて機械加工でやるのか、鋳物を使うかを決めることは、悩ましいことです。鋳物は加工ではできないような、複雑な形状を作ることができます。しかし、鋳物でできた部品に手を加えず、そのまま組み込むことは、ほとんどありません。何等かの機械加工を施します。
複雑な形状のため、加工が難しく製造部門では失敗しないように、慎重に加工を進めます。何十工程の加工の中で1か所でも失敗すれば、初めからやり直しです。いっそのこと鋳物を使わないで、加工しやすいように部品を分割して、組み立て多方が良かったと思うことが何度かありました。
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