023表面粗さ

 機械の部品図を作成するにあたり、悩ましいことは、寸法基準の設定と公差の決定、そしてもう1つは表面粗さの決定です。特に入社当初は、物理計算や統計計算で求めることができない、経験が必要とされる決定事項については悩みました。

 表面粗さは、部品図の各形状線の上に▽記号の数で表します。▽が多くなればなるほど表面状態はつるつるになります。ある日、▽の数の決め方をすぐ上の先輩に聞いたことがありました。「平面の基準面は▽2つ。穴と棒のはめあわせは▽3つ。面と面を合わせる場合は▽2つ。面合わせしなければ▽1つ。まったく加工しない場合は∽記号。▽4つは、よほどの必要性がない限り使用してはいけない。研削加工になり、高くつくから。」といった具合に教わり、結局長い間その基準で表面粗さを決定してきました。下記以外には大きな問題なく使用できる基準でした。

 ロボットの関節モジュールを設計する際に、表面粗さで失敗したことがあります。ロボット関節のなかには減速機としてハーモニックドライブが組み込まれています。この減速機を潤滑するオイルが外へ漏れないように、回転摺動部にゴム製パッキンを取り付ける必要がありました。外形寸法φ100㎜ほどの円筒部分にパッキンをはめ込み、オイル漏れを防止しようとしました。円筒部分の表面粗さは▽3つにしました。結果、オイルは見事に漏れてしまいました。

 円筒面の仕上げを旋盤で行うため、軸方向へのバイトの送りが入ります。この送りによって円筒面に螺旋状の跡が形成され、オイルがその螺旋に沿って、パッキンの外へ出て行ってしまったのです。どんなにきれいに表面を削っても、螺旋ができた時点でアウトになります。

 同様なロボットの関節を設計していた先輩の図面を見ると、同じく▽3つでしたが、「突っ切りバイト使用のこと。軸方向の送り厳禁」との注記がありました。「なんで教えてくれなかったのですか?」「だってパッキンの取説に書いてあったよ!」

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