022 M6位置決め精度評価

 入社当初ロボットアームの設計をしていました。垂直多関節ロボット(仮称:M6)でモーター、エンコーダー、ハーモニックドライブを1つのモジュールとして、回転軸と揺動軸を組み合わせて6自由度をもっていました。最大の特徴は、当時の垂直多関節ロボットとしては高精度であることでした。(繰り返し精度:±0.03㎜) 試作機ができると早速評価です。

 この精度評価が実に厄介でした。その1つが評価システムの構築です。その当時は6自由度どころか3自由度でさえ、同時に測定できる計測器はありませんでした。また、精度測定したデータを収集するツール、分析するグラフ、表計算ソフトもありませんでした。

 XYZの同時計測は非接触で計測できるPSD(Position Sensor Device)を使用しました。PSDから出力されるアナログ信号をデジタルに変換するADコンバーター、ロボットと同期させデータを自動収集するためにPIA(Peripheral Interface Adaptor)を使用しました。また、収集されたデータは、自動的にシーケンシャルファイルに格納させるシステムを構築しました。さらに、データをみえる形にするため、ヒストグラムに表示するツールを合わせて作成しました。システム作成言語はBasicでした。

 以上でロボットの精度を自動で計測するための準備ができました。実際の計測は高さ700㎜、縦横1,000×1,000㎜の角パイプの筐体の上に、厚さ20㎜、縦横1,000×1,000㎜のアルミ製の天板の4隅をねじで締結したテーブルに、被測定物のロボットと先のPSDを取り付けてロボットの繰り返しを測定しました。測定は21:00~9:00で無人で行いました。

 繰り返し精度の結果は±0.03㎜を大きく外れる数値となっていました。繰り返し精度は、ロボット単体の一定方向からの位置決めのばらつきを示しますが、時間と伴に位置がずれてしまう所謂ドリフト現象が発生してしまいました。厄介なことに原因はすぐにはわかりませんでした。

 結局、原因は測定環境の変化(室温の変化)にありました。ロボットとPSDを取り付けていたテーブルが、ねじで締結されているアルミ天板と鉄パイプの筐体の熱膨張の違いで歪んだためです。(ポテトチップスのようなアンジュレーション)

 ねじを全部緩めた状態で測定し、ドリフト問題は解決しました。ちなみに、現在はレーザーを使用した6自由度ロボットの位置を計測する設備が専門メーカーから提供されています。今の人達は恵まれている、なんでもそろっていると思いましたが、同時に昔、両親から「お前たちは何でも食べられる、戦時中は食べたくても、食べるものがなかった」とよく言われていたことを思い出しました。

SHIMAMURA ENGINEERING OFFICE

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