024リサージュ波形
みなさんは、オシロスコープにXとYの入力チャネルがあることをご存じですか?例えば、Xチャネルにサイン波を入力して、Yチャネルに位相差90度のサイン波を入力すると、画面に円形の図形を表示することができる機能です。任意のサイン波を入力して、その位相差を測定することが本来の目的です。
ロボットの関節モジュールは、モーター、エンコーダー、ハーモニックドライブの3要素で構成されています。エンコーダーはモーターの回転数を検出するセンサーで、回転速度、位置、方向を検出することができます。インクリメンタル型とアブソリュート型があり、当時はインクリメント型が分解能の点で優れていたので、広く採用されていました。
イ ンクリメント型エンコーダーは、A相信号、B相信号、Z相信号を出力します。A相、B相は、円板上にきざまれている1024のスリットで光学センサーをON/OFFさせて作られます。(モーター1回転当たりで1024のサイン波を発生します) そのサイン波の数が位置になり、周波数が速度になります。また、A相とB相は90度の位相差があるため、+回転か、-回転かがわかるようになっています。Z相はモーター1回転に付き、1つの信号を出すもので、原点信号として使用します。
当時、ロボットの関節の組立は、このエンコーダーのスリット円板の取り付けと、調整が非常に重要な作業の1つとなっていました。円板がモーター回転軸の中心になかったり、光学センサーから離れたりするとちゃんと出力されません。そこで逆に、オシロスコープのXYチャネルにA相、B相の信号を入れ、画面上に規定の円が表示されるように円板の位置を調整します。通常、斜めの楕円であったり、円が極端に小さかったりしているのを、手作業で調整することは至難のことでした。
ロボットのモーターは正転逆転します。正転のときは円が大きく、逆転の時は円が小さくなることがあります。これはモーター軸を支えているベアリングの軸方向の剛性がないということで、モーター軸を再度組み直すことになります。今考えると大変な仕事でした。
ロボット自身が持っているセンサーを利用して組立調整する。それも、リサージュ波形といった普段はあまり使用しないオシロスコープ機能を利用している点などは、エンジニアにとって、ある意味、魅力的な仕事でもありました。
現在、エンコーダーはアブソリュート型が主流で、かつモジュール化されているので、上記作業は全く発生しません。不具合があれば、よいものと交換するだけです。これはチェンジニアであって、エンジニアではありません。
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