016ラリーカーの改造

 学生時代に自動車部に所属していました。公道を走行するラリー競技と専用のダートコースを走行する競技に参戦するため、定期的に走行練習をすることが主な活動になっていました。部活動の集合時間は22:00頃で、ダートを走るための装備を施した車数台で、山間部を走行し、3:00頃に終了といった活動です。ほとんどの部員がバイトで貯めた10万円ほどの資金で中古車を購入していました。この金額で手に入る車といったら、サニー、カローラ、ギャランの10年落ちの車です。

 このレベルの車で競技会に勝つためには、ドライバー、ナビゲーター、カリキュレーターの腕以上に、車のチューニングが重要となります。足回りでは、ショックアブソーバーを硬いものに交換し、コーナーリング性能を高めるために、前輪をハの字になるようにセッティングしました。山間部走行時の転倒、落下に備えるため、4点シートベルトやロールバーといった安全装備品を車内に取り付けたり、夜間走行ではより視界がクリアになるように、ハロゲンヘッドライトに交換したり、フォグランプは道路の両脇を照らすようにセッティングしたりしました。エンジン関係ではキャブレター(ガソリンを空気と混合する機器)をシングルタイプからツインタイプへ交換したり、吸気効率を高めるバルブタイミングにするため、バルブを開閉するカムの位相を変更したりしているメンバーもいました。

 さらに、高出力を得るためには、圧縮比を高めることができるオクタン価が高いハイオクガソリンが必要となりますが、バイトで暮らしている学生にとって、ハイオク満タンを頼むことはできないので、ハイオク10リットル、レギュラー10リットルと言って給油してもらいます。ラリー競技に出場する場合、時として開催地まで自走する場合がありました。競技時にガス欠にならないように、ニュートラル走行を含め、省エネドライブにも気を使っていました。また、あるメンバーは車の軽量化にこだわり、車内のカーペット、シート類、後部座席など競技に関係がないものはすべて外してしまいました。煙草を吸う彼にとって、車内は大きな灰皿となっていました。

 以上のような車のチューニングや改造をして、夜間に山間部の林道で走行練習をする訳ですが、ドライブテクニックが未熟なため、メンバーのなかには林道から谷へ落ちる者、ガードレールに突っ込む者、転倒する者もいました。安全装備のおかげで4年間を通して怪我をしたメンバーは1人もいませんでした。ちなみに、昼間に同じ林道を走り、谷を覗くと数台のラリーカーが落ちたままになっていることがよくありました。学生にとっては、のどから手が出るくらいほしい改造部品が付いたままでした。

 つらつらと自動車部での出来事について、書いてしまいましたが、競技に勝つことを目的に活動してきた内容は、生産技術者の活動と全く同じであることに気が付きました。生産技術の普遍のテーマであるQCDES(Quality Cost Delivery Energy Safety)すべてが含まれています。常々、生産技術者はモータースポーツのエンジニアを見習うべきだと思っていましたが、その理由の1つが自動車部での活動にありました。

 最後に、改造車は車検を通りません。車検前にすべてノーマルに戻します。

SHIMAMURA ENGINEERING OFFICE

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