015ハーモニックドライブ®(その3)

 ハーモニックドライブの概要は003ハーモニックドライブ(その1)をご覧ください。

 新車を購入した時、最初の5,000Km走行まではエンジンの回転数を3,000rpm程度に抑え、その後エンジンオイルを交換して初めて全回転領域で使用します。機械部品の摺動部には多かれ少なかれ加工部品のバリ、カエリなどがあり、それを除去するため、慣らし運転をします。最初から高回転で機械を動かすと、バリ、カエリが原因で機械を傷つけてしまい、以降、既定の性能が出なくなります。

 ハーモニックドライブを組み込んだロボットも同様に、一定期間の慣らし運転が必要でした。サーボ機構で動作するロボットは、常に位置情報をエンコーダなどのセンサーで読み取り、遅れ進みを計測して、その差分をモーターのパワーアンプに送り、その情報に基づいてモーターの出力を制御していきます。この差分をモーター出力に変更する時に定数を設定します。これは個々のロボットが持つ固有値となり、チューニングで合わせ込みます。

 新品のハーモニックドライブと、慣らし運転後(新品よりもスムースに回転する)では定数が変わるので、再度チューニングが必要となってしまいます。当時、このチューニングはサーボを制御するプリント板上の抵抗部品を入れ換える作業で、非常に厄介な作業の1つでした。特に、導入先で行うのは大変でした。

 そこで、ハーモニックドライブを入手直後に、単独で数日間慣らし運転させて、ロボットに組み込んでから、チューニングするようにしました。導入先でのチューニングはなくなりましたが、製造工数としては本体の組立以上にかかってしまいました。

 現在は、ソフトウェアによるチューニングに代わっているので、このような苦労はないと思います。

SHIMAMURA ENGINEERING OFFICE

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