017市販ロボットの可搬重量

 現在、産業用ロボットは簡単にロボットメーカーから購入ができます。(ロボットメーカーが台頭していなっかったころは、各社の生産技術部門が独自に開発をやっていました) 自社の組立設備や自動組立ラインにロボットを活用することは、昔ほど難しいことではなくなりました。ただし、ロボットを導入しただけでは、何も生産に寄与できません。

 ロボットは単なる位置決め装置であって、組立作業や検査作業をさせるには、ちゃんとお膳立てしなければなりません。ワークのセット、部品の供給、ハンドリング、完成品の払い出しなどの一連の作業ができるように、システムを作る必要があります。このシステムの出来不出来により他社との違いができます。

 ある日、ロボットハンドを設計しているメンバーから、「ハンドリングするワークが大きくなった影響で、ロボットハンドも大きくなり、メーカー指定のロボット可搬重量を超えてしまい、100%のスピードでロボットを稼働させることができません。1ランク大きなロボットに変更する必要があります。」との報告を受けました。ロボットを1ランク大きくするということは、ロボットを搭載している設備も一回り大きくする必要があります。設備を大きくすると、それを組み込んでいる製造ラインも大きくなる、といった具合になってしまいます。

 そもそも可搬重量とは何の制約条件に基づいているのか?を考えると、重量が増えると、それを搬送するためのモーターの出力が必要となります。モーターの出力を上げるためには、電流を多く供給する必要があります。電流を増やすと、モーターの温度が上がります。限界温度を超えると、モーターが劣化して、以降既定の出力がされなくなってしまいます。だから可搬重量を超えてはいけません、となります。

 ここで大切なのは、どのような条件で?ということです。このロボットはどのような環境で、どのような稼働条件の時に可搬重量が決められていて、モーターメーカーの保証の対象になっているかを考える必要があります。

 このロボットの仕様環境は0℃~40℃となっています。このロボットを導入する工場は25℃で管理されています。ということは15℃のマージンがあります。早速ロボットメーカーに問い合わせると、案の定外気温度設定のパラメーターをもっており(取説には書かれていない)25℃に設定しました。当初の可搬重量の課題がクリアされました。

 1ランク大きいロボットに変更していたら、とんでもないことになっていたでしょう。

SHIMAMURA ENGINEERING OFFICE

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