006寸法線
部品図の価値は寸法記入にあります。設計者の意図する部品が正しく製作されるためには、正しい寸法と適切な公差の設定が重要です。さらに、加工基準、組立基準を設定することも重要です。寸法を記載する場合寸法線(←→)を使いますが、部品のある面を基準にして寸法線を引き、寸法線の上部に寸法と公差を記入します。
なぜ基準が必要なのでしょうか。1つは、組立誤差を最小限にするため(組立基準)。もう1つは工作機のベース基準と合わせることで、ばらつきの少ない部品に仕上げるため(加工基準)です。例えば、直方体の場合、高さ、幅、奥行きの3つの基準があります。さらに組立性や加工性の都合により、それぞれに第2基準、第3基準を設けることもあります。例えば、段付き丸棒のような円柱形状の場合は、長さ基準と軸基準の2つになります。円柱形状の部品の多くは、旋盤で加工するため、部品の回転中心の軸を基準とします。
入社当初、段付き丸棒の部品図を作成し、工場へ製作依頼を提出しました。工場へ製作の様子を見に行った時、どういうことか旋盤作業者が部品図を上下逆さまに図面台に取り付けて作業していました。「見にくくありませんか?」と尋ねると「旋盤の場合、材料の左端をチャッキングして、右端からバイト(刃物)を送って削るので右側基準で寸法記入してくれないと困る」とのことでした。提出した図面は左側端面を加工基準にしていたためでした。
設計者は常に加工方法のこと、組立方法のこと、現場のことを考えて設計することがいかに大切か、寸法線を通して知ることができました。
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