007鉄
機械を設計するにあたり、材料の選択、またその処理の選択も悩ましいものです。一般によく使う材料として、鉄系、アルミ系があります。鉄系のなかにも板金折り曲げに相応しい鉄、削りに相応しい鉄があります。アルミ系も同様です。処理も表面に塗装を施したり、メッキを付けたり、熱処理によって材料の硬度を増したり、靭性を増したり様々です。
熱処理の1つである鉄材料の焼き入れ処理は、何のために行うかご存じでしょうか。機械の摺動部に焼き入れ処理を施し硬度を増すことで、摩耗を抑制するためというのが、一般的に思い浮かびます。重要な役割の1つに、高精度な部品を作るためというのもあります。
旋盤で丸棒を削る時のことを考えます。丸材をチャックに取り付けて回転させ、バイト(刃物)を送り削ることで、指定の径に仕上げます。焼き入れが施されていない材料を削ると、丸棒がコンマ数ミリほど回転軸に対して垂直方向へ撓んで逃げてしまいます。その結果、指定の径よりも大きくできてしまいます。再度バイトで削る必要があります。こういった状態で高精度な部品を作ることはできません。高精度な部品を作る場合は、あらかた外形寸法を旋盤で削った後、焼き入れを施し、次に円筒研削盤で仕上げます。
焼きを入れていない鉄は豆腐のようなものだ。といったように現場の人が持っている鉄のイメージや感性は、ものづくりにおいて非常に重要であり、設計者とは大分違うと気が付きました。ある時、ロックウェル硬度60度の位置決めピンを作ってもらいましたが、「そんなものどこに使うの?使い物になるの?」と聞かれました。その直後、誤ってそのピンを床に落としてしまいました。まるで、ガラスのように割れてしまいました。
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