521自動化に向けた取り組み
以下は2015年に日本ロボット学会誌に投稿した論文の一部を抜粋し編集したものです。
電子電気機器に共通な製造プロセスはSMT(Surface Mount Technology)、プリント板ユニット、装置モジュール、装置、梱包の各工程の組立・検査から構成されています。SMT工程が自動化されている以外は、マニュアル作業が主流です。装置組立ではケーブルフォーミング・コネクティングが工程内に散在するため、ロボット化では大幅な設計改善が必要とります。一方、ユニット、モジュール工程は部分的な設計改善でロボット化が可能となります。特にプリント板ユニット工程においてはワークとなるプリント板に加工基準マークがあり、ばらつきが少なく、サイズも一定であるなどロボット組立に適しています。言い換えれば、製品設計段階で組立作業をプリント板ユニットに集約できれば、ロボット化が進むといえます。第1ステップとしてプリント板ユニットを対象とした自動化に取り組みます。
多機能組立システムのライン導入に向け、その効果を最大限引き出すため、多くの取り組みがあります。ここではDFM(Design for Manufacturing)をはじめとした自動化・ロボット化推進の方向性と取り組みについて述べます。
〈設計改善(DFM)〉
実際に行った設計改善について紹介します。対象はユビキタス製品のプリント板ユニットで、パーツは貼り物(絶縁シール)です。製品設計側では、絶縁したい端子の形状または周辺のエリア形状に合わせ、シールを設計していたため、機種ごとにシールの種類が増えてきました。これに伴い、製造側ではシール供給装置が複数台必要となり、多機能組立システム内の設置スペースの問題や、パーツ供給の工数増加が懸念されました。シールの完全共通化は設計側にとって大きな負担となるため、シール幅のみを標準化しました。長さ方向はパーツ供給機内で必要寸法にカットする方法を選択した。同時に設計ガイドラインとして規格化を進めた。これにより部材費、供給工数の削減を実現しました。
〈シミュレータ〉
VPS(Virtual Product Simulator)といったツールでDMU(Digital Mock-Up)を作成し事前に製品の組立性、作業手順を決定します。ロボットメーカから提供されているロボットシミュレータに周辺設備、ワーク、パーツのDMUを取り入れ干渉をチェックしながら最適動作パスをシミュレートするなど、バーチャル環境でプログラミングを実用化しました。現在はさらにラインシミュレータGP4といったツールでマニュアル作業をバーチャルに置き換え、人と機械が協調するトータルシミュレーション環境を整備しています。製品設計と製造ライン設計を同期することで大幅な生産準備期間を削減しリアル環境での垂直立上が可能となりました。
〈オートティーチング〉
ワーク、パーツの中にはカメラによる認識ができないものがあります。その場合、マニュアルのティーチングデータに頼った位置合わせが必要になります。ティーチング作業は理想値を求めて何度となく試行するため、膨大にかかる工数の短縮が課題となっています。プリント板ユニットの導通チェックアプリケーションはその一例です。ロボット自身がチェックパッドの中心をプローブピンでスキャンし、最適なティーチングデータを生成するしくみを開発、実用化しました。教示の自動化によって生産準備期間の工数を削減しました。
現在はロボットの自律化をめざし高度なセンシング技術の確立に取り組んでいます。
〈ロボットエンジニアの育成〉
以上の活動を支えるのが、ロボットエンジニアです。本体の生産技術部門が、各プロダクトグループの製造拠点の生産技術、製造技術エンジニアを受入れ、多機能組立システムや、プロダクト毎のアプリケーションの共同開発を通し、ロボットエンジニアを育成しています。
「自動組立は組立の自動化ではない。組立を自動化するために何かをすることである」は、SCARAロボットの産みの親であり自動組立の世界的権威者の牧野先生(現自動化推進協会名誉会長)の言葉です。
参考資料
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jrsj/33/5/33_33_314/_pdf/-char/ja
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