522 自動化・AI化する前に
以下は2019年度NPO法人自動化推進協会理事当時に機関紙の巻頭言として投稿した内容です。041自動化推進の課題の続編です。
以前、精密工学会の生産自動化専門委員会の研究会資料の中に、牧野先生(現自動化推進協会名誉会長)が「自動組立の基本」について7か条の形式で表現されていたことを覚えています。中でも「自動組立は組立の自動化ではない。組立を自動化するために何かをすることである」は、ものづくり技術者の課題へのアプローチのしかたを広げてくれる大切な言葉です。
自動組立をやり易くするため、組立性を改善することは、製品設計からのアプローチです。自社事業部が設計した製品であればDFM(Design for Manufacturing)を提案することで部品点数の削減、組立性の改善などを製品設計に反映させることは容易で、トータルで大きなコストダウンが期待できます。一方、最近では、自社工場で他社製品をつくるEMSビジネスを展開するケースも増えてきています。大きな効果が期待できると分かっていても、依頼元の事情によりDFMがままならないこともあります。
自社工場でコントロールできるIEからのアプローチはどうでしょうか。作業動線、部材供給動線を短くする等の改善活動に取り組むことで、スペース削減、省人化、在庫削減のほか搬送装置、ローダー/アンローダ、倉庫などの設備投資を最小限にすることができます。一方、工程内品質が安定しない場合(低歩留)は、修理、廃棄物処理などのムダは残ることになります。
製造業の共通かつ普遍のテーマはQCD-ESの改善であることは間違いありません。製造はプロセス系(部品、材料)と、アセンブリ系の2種類にわけることができます。歩留の視点から、プロセス系の不良品は修理・修正ができない場合が多く、廃棄となり大きな損失となります。アセンブリ系は、修理・修正が可能である場合が多く、歩留への影響は少ないと思いますが、直行率は下がります。
工程内品質の安定化が最優先となるプロセス系の場合、1%の品質改善が年間数億のコスト削減につながると分かっていても、新製品の早期立ち上げや、歩留90%以上の改善など、計画通り進めることに苦労している現場は多いと思います。
最近、品質改善領域におけるAI活用が注目されてきています。不良品の発生予兆監視、原因特定、真因追究などへの適用の可能性が考えられます。AIを進めるにあたり、必要とされるデータがセンシングされているか、データ量は十分か、埋もれているデータはないか、製造工程を流れる加工物それぞれにデータが紐付けされているかなど実行にあたり課題も多いと思います。いわゆる、データの見える化からのアプローチが重要となります。
自動化する前に、製品設計からのアプローチ、IEからのアプローチが重要であって、IEを進めるにあたって品質改善が重要となり、品質改善をAI化する前にデータの見える化からのアプローチが重要となります。自動化、AI化を実行する前に、これらアプローチを進めるだけでも、大きな効果が得られることは、周知の事実です。
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