512最適化とバラツキ

 「多変数関数の最適化と言っている問題がある。いくつかの入力変数があって、それに応じて変わる出力関数がある時、その出力関数を最大あるいは最小にするためには、それぞれの入力関数をどのような値にしたらよいかという問題である。これはたとえて言えば山登りに似ている。山の一番高い地点はどこかと探すわけなのである。東西方向をx方向、南北方向をy方向都市、高さをzとすると、z=f(x,y)という2変数関数が得られることになる」

 「コンピュータを使ってこの問題を解くときには、目かくしをして、竹馬に乗って、山の一番高い地点を探すということになる。たとえば、北に向かって歩いていく、そうするとだんだん高くなっていくとする。高くなる限り歩き続ける。そうして、ある所で、前より低くなったとすればその前後に最大の場所があるはずだから、そのあたりをもう少し細かく調べて最大になる所を求める。東西方向も同じ様にして最適値を求める。~中略~変数がもっと多くなると大変である。いろいろな変数の、いろいろな組み合わせとその程度について、最適値であるかどうかをチェックしなければならない。~以下略」

 「シーバス・リーガル・ロボット」 牧野洋 著 技術調査会発行 より

以前、フィージビリティースタディーで取り組んだ、プリント基板のメッキ品質の安定化を例にあげると課題は、「メッキ製造工程の管理項目である温度、濃度、電流など数十におよぶ入力変数に対して、出力関数であるメッキ厚さが指定の値に近づくためには入力変数をそれぞれいくつにすればよいか」となります。現在、コンピュータで計算させれば難しいことではないと思います。しかしそれには入力変数にバラツキがないことといった前提が必要となると思います。

 各入力変数には製造上のバラツキやドリフトなどが発生します。製造上のバラツキはMan, Machine, Material, Methodの4Mに関わるものです。バラツキの中には周期性があるもの、ランダムのものなどがあり、それぞれ原因を追究して対策を講じる必要があります。それでもバラツキを0にすることはできないと思います。

 牧野先生はさらに次の様に述べられています。

 「最適条件を厳密に求めるのは極めて難しいのである。ところがよくしたもので、最適条件を厳密に求めることは難しのだけれど、そこから多少はずれても、結果はそんなに悪くはならないのである。これを我々は「山のてっぺんは平ら」だと言っている。数学的に言えば、極大・極小値の所では微分がゼロであり、したがって、少しくらい変数が変化しても、関数に大きな違いは生じないのである。極大値の付近で切り立ったり、不連続になったりしているような関数は、理屈の上では考えられるが、現実の問題ではあまり存在しないのである。

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