511工場全体の自動化の鉄則(Photo by mika-san)

 「玉に糸を通すのと、糸に玉を通すのと」といった記述が自動組立の権威である牧野先生の著書の中にあります。下記の通り工場全体の自動化を図る際の鉄則です。

 生産工場にはいろいろな機械が配置されている。これを工程順に見てみると、たとえば、切削加工機械→熱処理機械→研削機械→洗浄装置→組立機械→検査機械→包装機械などという順序になる。ところが、生産工場の中でこれらの機械はこの順序に配列されているとは限らない。熱処理装置や洗浄装置は別棟に置かれているが普通であるし、その他の機械も納入されたときにたまたまあったスペースに設置されているというケースが多い。そのため、これらの機械間を流れるワークの流れは、あっちに行ったりこっちに来たり、きわめて錯綜したものになる。

 この状態は、たとえて言えば、機械という玉があちこちに置かれていて、これにものの流れという糸を通そうとすることに似ている。そのために糸は長くなるし、糸同士がからみ合うことになってしまう。自動化を行おうとする場合に、これではうまくいかない。まずものの流れを確立して、これに対して各種の機械が機能的に配置されるようにしなければならない。いわば玉に糸を通すのではなく、糸に玉を通すようにしなければならない。

 手作業に頼ってワークの運搬を行っている間は、この糸は目に見えない糸である。しかし、これを自動化すると、糸はコンベアあるいは移動(トランスファ)装置となる。これをまず考えることが必要である。つまり、機械をコンベアでつなぐのではなく、コンベアに機械を取付けるのである。こうすれば自動化はずっとやりやすくなり、工場はスッキリした形にまとまる。まずものの移動法を考えろ、というのが、工場全体の自動化を図る際の鉄則である。

「裏返しのメニュー」牧野洋 著 情報調査会発行

また、N社の自動化導入コンサルティングや自動化ライン設計などのサービスは、ロボットSIでありながら、必ずしも「自動化ありき」ではないと述べています。

「ロボットで自動化する前に、工程そのものを改善する」(N社)。工程を改善せずに自動化を進めると、無駄や品質不良の原因なども残ったままとなる上に、自動化してから改善するのは難しいからだ。

 そのため、事前検討段階でまず工程改善に取り組む。その結果として、ユーザー企業が当初考えていたほどは自動化しないという判断に至る場合もあり得るという。N社は、「ロボットとは直接関係ない工程改善まで手掛けるコンサルティングサービスは、既存のロボットSI事業者にはなかなかできないはず」と胸を張る。

日経クロステック 特集2 2019.09.30 から一部抜粋

 以前、携帯電話製造のサブ組立ラインの自動化に取り組んだことがあります。この時は、ロボットが持っている機能に合わせて、供給トレイの見直し、レイアウトの見直し、作業動線の見直しをしました。当初サブ組立ラインの運用は作業者7名で行っていましたが、見直しをかけることによって、ロボットがなくても3名体制で運用できることが分かりました。結局、ロボット導入は見送られました。

「自動組立は組立の自動化ではない。組立を自動化するために何かをすることである」は冒頭の牧野先生の言葉です。

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