499汎用度指数と自動化推進
ノートパソコンや携帯電話のような電子機器の製造分野について、どのように自動化を進めるのかを数値をもって考えてみます。製造の大きな流れは部品実装→組立→梱包の順になります。自動化を進めるに当り、どのような自動化設備を、どんな順に、どの工程に導入していくかを、自動組立の権威である牧野先生が以前提唱された汎用度指数と合わせながら見てみます。
汎用度指数について…自動組立を行うべき製品群の一連の工程があり、これを自動化する機械あるいは機械システムがあります。この場合に、この両者のフレキシビリティの程度が一致しないと自動化はうまくいきません。その程度を判定するために牧野先生が考えたのが汎用度指数(Versatility Indicator)VIです。
汎用度指数VIは基本的には1台の機械、あるいは1つのシステムが1年間当り許容できるモデルチェンジの回数です。これを機械の種類(たとえば間欠回転型機械や非同期方式組立機械など)ごとに推定し、これと、実際の仕事に要求されるモデルチェンジの頻度を比較して、そのマッチングをとろうとするものです。
仕事の方の汎用度指数は次式によって計算します。VI=C1×C2×C3×C4×C5。ここでC1(モデル数係数)はその機械またはシステムによって組み立てるべき製品モデル数です。C2(月産量係数)は月産10万個の時を1とします。C3(人手係数)は現状の人手作業が5人かつ1シフトで行っているときを1とします。C4(部品点数係数)は部品点数(部品種数)10点を1とします。C5(サイズ係数)は指先でハンドリングできるサイズ0.5、片手1.0、両手2.0、それ以上は10kgfにつき1とします。
これに対して機械システム(ハード)のVIは次のように推定します。特殊専用機は0.1以下、連続移送機械0.5以下、間欠回転型0.1~2、間欠直進型0.5~10、非同期移送機構5~50、組立用ロボットライン10~1000、知能ロボットあるいは人手1000以上 です。
電子機器の製造においてプリント板実装工程は、チップ実装と異形部品実装があります。チップ実装はコンデンサ、抵抗などのチップ部品を搭載します。0603 0402など形状大きさが決まっているため、モデルが変わってもハード的な変更が少ないのが特徴です。C1=12 C2=1 C3=4 C4=0.5 C5=0.5 VI=12 くらいだと思います。異形部品実装の場合は、部品種が増える点が特徴です。C1=12 C2=1 C3=1 C4=4 C5=0.5 VI=12 くらいだと思います。
プリント板ユニット他、モールド品、ケーブル類、表示器などの購入を最終製品として組み立てる工程はスペック(メモリ種、インターフェース種)や色の組み合わせでモデル数が大幅に増えるのが特徴です。C1=12プリント板ユニット×3メモリ×3インターフェース×3色=324 C2=1 C3=2 C4=12 C5=1.0 VI=7776 くらいだと思います。梱包工程は梱包箱の形状サイズが機種にかかわらず共通化が図られているのが特徴です。C1=12 C2=1 C3=1 C4=4 C5=0.5 VI=12 くらいだと思います。
全て想定条件で算出しましたが、電子機器の製造においては実装工程、梱包工程は組立ロボットラインがマッチングしますが、組立工程は人手作業となります。ご存じの通り、組立は大小の異形部品が混在し、柔軟物のハンドリングなどの課題もあり、自動化に高度の知能化が必要です。ただし、組立工程内の検査工程でのハンドリングなどは、すぐにでも取り組めるものだと思います。
難易度の高い組立技術を開発するか、組み立てやすい部品または共通化するか、いずれも自動組立の使命です。
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