498アセンブリセンタ

 自動組立分野において世界的な権威者である牧野先生(自動化推進協会名誉会長)の著書の中にアセンブリセンタという記述が幾度となく出てきます。牧野先生が70~80年代に提唱されたアセンブリセンタとは、以下の通りです。

 機械加工においてNC(数値制御)プラスATC(自動工具交換)の機能を持つマシニングセンタが多品種少量生産に効果を上げています。組立の分野でも同じようにNCプラスATCの機能を持つアセンブリセンタを作ろうというものです。1つのステーションでなるべく工程を集約して1つのステーションでなるべく多くの部品を組もうと考えたものです。

 さらにこのアセンブリセンタのために、部品供給方式として検討されているのが、キット方式です。アセンブリセンタを何台か並べたルームと部品倉庫との間に配膳室を設けて、何人かの作業者がパレットの上に部品を並べるキット作業をします。部品のキットはコンベアで組立ルームに運ばれます。アセンブリセンタ組立後、出来上がった製品はコンベアに乗って倉庫に戻っていきます。といった仕掛けが多品種少量生産に対応できる自動化工場だということです。

 また、この方式の問題点も記述されています。1つ目は組立要員が減っても、配膳要員が必要となるので、人がさっぱり減っていないといった点です。2つ目は部品をキッティングするパレットをモデル毎に作らないといけないため、コスト的な面と設計・製造に時間がかかり、急速に対応するというわけにいかない といった点です。

 現在、この点について技術的に解決できれば、アセンブリセンタは多品種少量生産の標準となると思います。たとえば、1つ目の問題点については、確かに見た目の人は減っていませんが、組立作業といったスキル、ノウハウを持った人は削減されます。配膳は組立作業ほどのスキルが必要とされませんので、人件費として抑えることができます。問題点のなかには記述されていませんが、設備のメンテ人員は増えます。しかし、もともと組立作業者への教育は製造、製造技術部門で行っていたので、同じく設備に対してティーチングすればよいので、トータルでは変わりません。

 2つ目の問題については、80年代当初にはなかった技術が、現在ではいろいろとあります。その1つがデジタル化、3D化です。製品の設計は今ほとんどが3D-CADで行われます。部品図ができれば部品の形状をかたどったパレットも簡単にできます。パレット製造に関しても3Dプリンターでできてしまいます。

 当時問題であった点は、現在の技術を使えば解決できます。アセンブリセンタ構想を実現する時期だと思います。これを機に自動化率を進めことで、変量に対する問題も解決できればと思います。繁忙期にはロボットが昼夜問わず稼働し、閑散期にはメンテや次期製品のための準備といった型ができてくれば、変量に伴う、作業者の雇用、解雇で悩むことはなくなります。

SHIMAMURA ENGINEERING OFFICE

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