366 QCD改善の取り組み(コスト)

 ものづくりの普遍のテーマはQCD+ES(品質・コスト・供給+環境・安全)の改善であることは周知の事実です。ただ、その定義についてはあいまいの場合が多いと思います。QCDの改善とはものづくりの現場の努力で、ものづくり側、提供される側の両者がうれしい取り組みです。一方ESの改善の多くは行政、業界からの要請により取り組まなければならないテーマ(CO2削減や防火対策など)です。両者にとって直接的、短期的にはうれしい取り組みではないと思います。

 さらに、ここではQCDの改善についてそれぞれについて次の様に定義します。

Qの改善:ものづくりの過程(製造工程)内において、製造の安定化を図り不良を削減する取り組み。最終製品の歩留りの改善。

Cの改善:部品、材料、労働力、エネルギーの調達コストを如何に抑えるかの取り組み。

Dの改善:品質やコストを維持し、市場が要求する物量を如何に提供するかの取り組み。

 実際にはQCDの適切な改善の組み合わせにより、トータルの改善効果をねらいます。今回はコスト改善について過去の事例を記載します。

<電話線の自動配線システムのコスト改善>

 現在のように携帯電話が普及する前、固定電話の基地局には電話線を配線する設備がありました。新規の電話加入があると電話線を増設したり、電話番号の変更があると配線を入れ換えたりを、人手作業で行っていました。(旧電電公社) これをロボット技術で自動化する大規模なプロジェクトに参画したことがあります。

 従来は、人手によるラッピング作業で結線していましたが、自動化に伴い、複数のマトリックスボードと接続ピンを使った結線方法が新たに導入されました。ロボットでマトリックスボードの接続穴へ接続ピンを挿入したり、接続穴から接続ピンを抜去したりして配線を行います。このシステムは最終的に、全国の無人の局舎へ1,000台以上導入されました。

 このロボットによるシステムは、マトリックスボードを取り付ける大型の枠と、搬送用の機構の上にXYZθ軸からなる機構で構成されています。開発段階において、プロトタイプの設備を試作し、機能、性能、信頼性、耐環境性、コストについて評価を行いました。

 さてここから、コストダウンについてお話します。1セットの部品点数は3,000点以上であったと記憶しています。プロト機の費用は、顧客の要求価格の3倍を超えていました。これを3日間の合宿でコストダウンするため、本システムを開発した生産技術部門のほか、製造技術、製造、調達部門が集まりました。場所は会社の保養所でした。朝の8時から夜の12時まで部品図、組立図を1枚ずつ見ながらコストダウンのアイデアを抽出していきました。夕食以降は、少々アルコールの力も借りていたことを覚えています。

「この部品は本当に必要ですか?」「この処理は本当に必要ですか?」「本当にこの加工が必要ですか?」「こんなに精度が必要ですか?」「標準部品で代替できませんか?」「別の処理に換えることはできませんか?」「共通化できませんか?」「一体化できませんか?」「削りではなく板金化できませんか?」など設計者にとっては非常にきつい質問ばかりです。何しろ部品点数を1/3に抑えれば、目標は達成するのだからと、調達のメンバーは執拗にまで部品点数の削減にこだわっていました。

 この合宿を通して気づいたのは、ねじの削減でした。ブロック部品を取り付ける時、フランジを利用して取り付ける時、購入品を取り付ける場合、無意識に各部品のコーナー(大体4隅)を使ってねじ締めすることが多いと思います。物体を固定する場合、位置ずれ、回転ずれが発生しないように、最低2か所でねじ締めすれば成り立ちます。

 ねじを4点から2点へ、ねじのバカ穴を4点から2点へ、ねじ締めされる側のタップを4点から2点へ、そしてねじ締め作業も4点から2点へといった具合に、1つの部品を取り付けるだけでも、かなり効果が出るコストダウンにつながります。

 最終的に3日間に要求価格に達成したか否かは記憶にありませんが、普段の業務と違い短期間に多くのアイデアが創出されたのは確かだったと思います。

SHIMAMURA ENGINEERING OFFICE

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