354フーリエ変換と周波数分析

 フーリエ変換と最初に出会ったのは、大学2年の微分方程式の講義の時でした。講師が、技術者にとってフーリエ変換がいかに重要であるかを、熱心に教えていた様子を覚えています。どのような内容であったかは記憶にはありませんが、教科書には必ず試験に出るとの書き込みがされており、今も残っています。

 大学を卒業して、次にフーリエ変換と出会ったのは、入社数年後の業務でプリンターの不具合を調査する時のことでした。小型レーザプリンターのサンプル画像において、何本かの筋ができてしまうといった不具合でした。当時のサンプル画像はベンツのフロントガラスであり、あたかも雨が降ったように数本の筋が、フロントガラスの上についていました。これがプリンターの品質において良くないことは言うまでもなく、早急に原因を調査して対策する必要がありました。

 ご存じの通り、レーザプリンターの原理は、画像情報を乗せたレーザー光をポリゴンミラーで感光ドラムに照射し、感光したところだけトナーが付着して、さらに紙に転写させるといったものです。当時の画像情報は600dpi(dot per inch)程度であったと思います。前述の雨が降ったような筋ができるのは、このdot間隔が一定でないと生じる現象です。その真の原因を突き止めるためのツールがフーリエ変換を応用した周波数分析です。

 プリンターの機構は感光ドラム、転写ドラム、定着ローラ、ピックローラといった回転体を数個のパルスモータで駆動させますが、駆動力を伝達させるために、多くのギア列を構成する必要があります。プリントは一定の速度で行われるので、ギアを含めた回転体には周期性が伴います。(周期的特性)

 ここでフーリエ変換が登場します。前記の周波数特性を持った様々な波が合成波となって、先ほどの一定ではないdot間隔の画像を作り出します。逆に、この画像結果を使ってフーリエ変換することで、どの周期の部品が原因であるかがわかります。このdot間隔を読み取る装置は世の中にあり、同時に合成波を検出しフーリエ変換します。その結果、伝達系のあるギアが原因であることを突き止めることができました。そのギア精度を高めることで、解決できたと記憶しています。

 これがフーリエ変換であり、学生の時、講師が重要であるといった所以がこの時わかりました。以来、周波数分析、振動値分析では非常にお世話になっています。

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