355ものづくりの基礎(パレート図)
日経ものづくり2021/4号に「ものづくりの基礎が危ない」といったタイトルで次のような記事が掲載されています。
ものづくりに関する技術者の基礎的スキルや知識の低下は、危機的なレベルになっている。そう考える技術者が多いことが日経ものづくりの実施したアンケートで明らかになった。~中略~ 世界市場での厳しい競争を勝ち抜くため、ほぼ全ての製造業が低コスト化や開発期間の短縮といった効率化に取り組んできた。価値を生み出さないムダな作業を、標準化や共通化、デジタル技術の活用によって極力減らしていこうという取り組みである。しかし、こうした取り組みは技術者の基礎力低下を招く懸念がある。
以上 日経ものづくり2021/4号抜粋
さらに記事は次の10のキーワードを取り上げ、解説しています。「ポンチ絵」「デザインレビュー」「モジュラーデザイン」「生産管理システム」「受注生産と計画生産」「安全在庫」「パレート図」「強度と剛性」「焼き入れ・焼き戻し」「工程能力指数」。ここでは、「パレート図」にまつわる過去の経験について記述します。
ちなみに、パレート図とは、データ要素の値を表す棒グラフと、要素の構成比を累積して表す折れ線グラフを組み合わせた複合グラフ。品質管理の分野でよく使われる。とあります。さらに、パレート図の主な特徴は、①何が問題なのかが一目で分かる。②問題の大きさを客観的に理解できる。③複雑な計算が不要で簡単に作図ができる。とあります。そして、この特徴を生かして、改善に取り組む優先度を決めたり、改善効果を把握したりする際の便利な手法として利用できる。とあります。
しかし、パレート図作成の前提条件として何等かの数値データが揃っていることが必要となります。ものづくりの現場においては、目視チェックなど、現場のベテランのカンや経験に頼った運用がされていることが多くあります。その場合には、特性要因分析や重要度緊急度分析などの手法を使い、改善に取り組む優先度を決めることが出来ます。
<特性要因分析>
以前、プリント基板製造工場の品質改善に取り組んだことがあります。ものづくりの品質不良には大きく2つの要因があり、要因分析はこれらを起点に進めることができます。そこで使った特性要因分析の進め方は次の通りです。
1つ目は設計要因です。設計上求められる許容値が厳しすぎると製品を作るのに難しくなってしまい、逆に許容値が緩すぎると製品としての性能が不足してしまいます。したがって、設計は適正値にすることが求められます。
2つ目は製造要因です。製造では、加工品質が許容値の範囲に入るよう、決められた仕様の理想にいかに近づけてバラツキなくものを作るかが求められます。しかし、実際に製造現場では、これを十分に満足することは難しいことです。
そこで、特性要因図、いわゆるフィッシュボーンを作成して要因分析を実施しました。中央の背骨から下に設計要因を、上に製造要因を表記し、さらに製造要因は4M(Man、Machine、Material、Method)の観点を取り入れて製造工程毎に分析を行いました。そして想定される要因をできるだけ多く抽出した上で、現場のベテラン技術者や有識者の意見を聞きながら、各要因に重要性の優先度をつけていきました。
<重要度緊急度分析>
以前、IOTの商談で2日間、タイのセメント会社を訪問したことがありました。初日に工場見学し、2日目には現地の若いエンジニアとワークショップを行いました。
ワークショップでは、工場の講堂に30余名の若い技術者が集まりました。その前で日本人のエンジニアがIOTでなにができるか、自動化でなにができるかをテーマにプレゼンをしました。プレゼン終了後、3グループに分かれ、ワークショップが始まりました。ファシリテータは日本人のエンジニアです。
最初は現状抱えている、各部署、各人の課題について討議し、そこで一旦グループ発表をしました。ここで、課題の共有ができ、さらに新たな課題が追加されました。次にその課題の効果と先のプレゼンで説明があったIOT、自動化を使ってどのように解決できるかを討議して、同じく発表を通して、共有化を図りました。
次に、各グループの検討内容、課題、効果、対策について、どのように実際に進めるかを決めました。ファシリテータから重要度と緊急度の2軸からなる、4象限に分類するように指示され、全体で討議しました。最終的に、セメント製造にかかるコストのほとんどが、材料費とエネルギーであり、これをIOTで解決するといった内容が、最初の取り組みテーマになりました。そのほかにも、石炭採掘時に、ショベルカーの爪が折れて、石灰の中に混入し、後工程の設備が破損してしまうなど、設備の故障予兆ができないかなど、いずれも素晴らしいアイデアが出てきました。タイの技術者たちは早速、実行プランの作成に入りました。
このように、ワークショップを通じて重要度緊急度を分析して、次のアクションに繋げることが出来ます。
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