353ものづくりの基礎(安全在庫)
日経ものづくり2021/4号に「ものづくりの基礎が危ない」といったタイトルで次のような記事が掲載されています。
ものづくりに関する技術者の基礎的スキルや知識の低下は、危機的なレベルになっている。そう考える技術者が多いことが日経ものづくりの実施したアンケートで明らかになった。~中略~ 世界市場での厳しい競争を勝ち抜くため、ほぼ全ての製造業が低コスト化や開発期間の短縮といった効率化に取り組んできた。価値を生み出さないムダな作業を、標準化や共通化、デジタル技術の活用によって極力減らしていこうという取り組みである。しかし、こうした取り組みは技術者の基礎力低下を招く懸念がある。
以上 日経ものづくり2021/4号抜粋
さらに記事は次の10のキーワードを取り上げ、解説しています。「ポンチ絵」「デザインレビュー」「モジュラーデザイン」「生産管理システム」「受注生産と計画生産」「安全在庫」「パレート図」「強度と剛性」「焼き入れ・焼き戻し」「工程能力指数」。ここでは、「安全在庫」にまつわる過去の経験について記述します。ちなみに、安全在庫とは、想定外の欠品を防ぐための予備の在庫。需要変動および補充期間の不確実性を吸収するために持っておくことです。
島根のパソコン工場を見学した時、製造ラインの脇に自動販売機のような物がありました。定期的に作業者がその中から小さなボトルを取り出し、製造ラインの設備の脇に置いてある空のボトルと交換していました。何をやっているのか尋ねてみると、「ボトルの中身は接着剤で、プリント板に実装した部品を固定するために使います。ボトルの中の接着剤がなくなると、作業者があの自動販売機のようなストッカーから1本もってきて交換するのです。あのストッカーと接着剤はベンダーさんの物で、私たちの製造現場に設置し、使用した分だけ補充してくれます。私たちは使用した分だけ支払いすればいいのです。」この方式をVMI(Vendor Managed Inventory)※というそうです。
工場側から見ると、ベンダーに対して時として有償で商品を置く場所を提供して、かつ在庫を持たないといった大きな利点があります。さらにストックアウトに対しても効果があります。VMIは在庫削減と安全在庫を考える上では理にかなった方式であると思います。
※VMI(Vendor-Managed inventoryの略)とはサプライヤーが顧客との間で事前に取り決めした在庫レベルの範囲内で適切な在庫レベルと在庫ポリシーを決め在庫を補給すること。小売業でのケースが多く散見される。顧客(カスタマー)は発注をしない代わりに情報をサプライヤーと共有する必要がある。情報とは製品の利用または売上げ記録、現在の在庫量、プロモーションなどのマーケティング活動の予定を含む。
サプライヤーは主には以下3点のメリットがある。まず、顧客の受注行動を考慮する必要がなくなり需要予測が比較的容易になる。結果、不必要な予備在庫を減らすことが可能である。次に、サプライヤーは予想外の短期需要に応えるための追加の生産コストを減らすことができる。3点目はストックアウトの頻度を減らすことが可能で顧客サービスを向上することが可能である。
顧客のメリットには、在庫レベルの減少、ストックアウト頻度の減少が考えられる。また、顧客は製品が使われるか売れるまで在庫に注意を払わないと言われていることからキャッシュ・フローへ改善の効果も期待できる。VMIの例としては海外ではウォルマートとP&Gのケースが有名である。1985年に始まった提携はP&Gのオンタイムデリバリーと在庫回転率の向上に大きく貢献したといわれている。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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