346熱の発生は共通の最大要因

 体温が37℃を超えると体がだるくなったり、頭痛がしたり何らかの体調不良の症状が現れます。鼻水が出たり、咳が出たりの程度であれば、無理をしなければ、会社に行って、通常の業務をすることができます。しかし、熱が出ると業務そのものができなくなることが多いと思います。そこには、熱が出る最大の要因が潜んでいるため、何らかの対処をする必要があります。人の場合、インフルエンザ、感染症、肺炎などの内臓疾患の原因を調べ、それにあった治療をする必要があります。

 機械も同じで、温度が異常値になると、そこに何らかの根本的な原因が潜んでいます。例えば、車のエンジンの場合、オーバーヒートがあります。エンジンを冷却する水の温度が上がると、車は異常をドライバーに水温計を通して伝えます。なぜエンジンを冷却する必要があるのでしょうか。1つにはエンジンが正常に動作できる温度に保つ役割があります。1つには冷却水の温度を監視することで異常燃焼をはじめ温度異常を検出するセンサーの役目があります。燃焼温度やその他の熱を直接測ることはできないからです。

 例えば、エンジンの可動部分の場合はどうでしょうか。可動部分は常に金属部品が擦れ合っています。擦れ合うことで、そこに摩擦熱が発生し、ある限度を超えると、焼き付いてしまい、動作できなくなります。その対策の1つとして機械の摺動部分は常にオイルで潤滑し、摩擦抵抗を低減しています。エンジンには各摺動部へ潤滑オイルを送り込むポンプがあります。このポンプが故障すれば、十分にオイルが行き渡らず、摩擦熱が発生します。ではなぜポンプが故障したのでしょうか。オイルの中に金属片などの不純物が混入し、ポンプが詰まってしまったのでしょうか。なぜ不純物が入ったのでしょうか。オイルフィルターが十分機能していなかったのでしょうか。なぜオイルフィルターが機能していなかったのでしょうか。など、熱の発生から、その原因を突き止めることができます。

 例えば、ターボエンジンの場合はどうでしょうか。ターボとは過給機のことで、エンジン内に密度の高い燃料(ガソリンと空気を混合したもの)を送り込むことができます。シリンダーの中に密度の高い燃料が入れば、爆発の威力が増し高出力を得られます。しかし、同時に熱も発生するので、密度を高めるためには限界があります。モータースポーツカーの場合、さらにインタークーラーといった、ターボ機構を冷却する機構を追加します。これは熱を下げ性能を上げる例です。

 例えば、ロボットに使われているモーターの場合はどうでしょうか。やはり、過負荷をかけると熱が発生して出力が低下します。モーターがある出力、トルクを発生するためには、電流の供給が必要となります。電流が多くなれば、そこに熱が発生します。磁力といった属性を持ったモーターは、必要以上に熱を加えると、その性能が劣化します。その限界を超えてしまうと、常温に戻しても性能は戻らなくまってしまいます。ちなみに、モーターには瞬時最大電流と連続定格電流の2つの規定があり、この2つを満足するように、機械設計者は自動化設備を設計します。

 例えば、大型コンピュータには水冷機能、PCにはファンなどの空冷機能があります。どうして必要なのでしょうか。同じく、そこには熱が発生すると具合がよくないことが潜んでいるので、熱を抑えると伴に、温度異常を検出しているのです。

 例えば、メッキ槽の場合はどうでしょうか。メッキ生成の工程においてメッキ厚を一定に保つために、槽の温度は一定に保たなければなりません。温度が1度違うとメッキ生成速度が数倍も違ってしまいます。また、メッキ生成速度を加速、抑制するため薬液を投入することがあります。しかし投入と同時に液の温度が瞬間的に上昇します。これらのことを熟知した現場のベテランのカンと経験で槽の温度は一定に管理されています。

SHIMAMURA ENGINEERING OFFICE

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