345ものづくりの基礎 (デザインレビュー)
日経ものづくり2021/4号に「ものづくりの基礎が危ない」といったタイトルで次のような記事が掲載されています。
ものづくりに関する技術者の基礎的スキルや知識の低下は、危機的なレベルになっている。そう考える技術者が多いことが日経ものづくりの実施したアンケートで明らかになった。~中略~ 世界市場での厳しい競争を勝ち抜くため、ほぼ全ての製造業が低コスト化や開発期間の短縮といった効率化に取り組んできた。価値を生み出さないムダな作業を、標準化や共通化、デジタル技術の活用によって極力減らしていこうという取り組みである。しかし、こうした取り組みは技術者の基礎力低下を招く懸念がある。
以上 日経ものづくり2021/4号抜粋
さらに記事は次の10のキーワードを取り上げ、解説しています。「ポンチ絵」「デザインレビュー」「モジュラーデザイン」「生産管理システム」「受注生産と計画生産」「安全在庫」「パレート図」「強度と剛性」「焼き入れ・焼き戻し」「工程能力指数」。ここでは、「デザインレビュー」にまつわる過去の経験について記述します。
入社してから15年間ほど自動化設備の機械設計と機械製図を行っていました。当時の製図はドラフターとう可動アームが付いた直角定規と60度ほどの傾斜がついた製図版を使って、方眼のトレーシング用紙にシャープペンシルまたは芯を平に削った鉛筆で図面を描いていました。
最初はA1サイズの用紙に組立図を描きます。ロボットアームの場合、中心線を描いて、事前に設計したモーター、減速器、ベアリング、エンコーダーなどの機械要素を仕様通りのスペースに収容できるように配置してブラケットなどの構造物を描いていきます。用紙の1/3程度出来上がる頃になると、作業しているドラフターの周りに先輩たちが頻繁に立ち寄ってきます。「ベアリングの位置がよろしくない」「それでは強度的に問題だと思う」「部品の締結方法が違う」またある先輩は「そんなことも知らないの」「モーターの選定やりなしたら」など好きなことを言っては、その場を去り、思いつくことがあればまた来ます。よく言えばアドバイスをしてくれます。結局、A1用紙10〜15枚くらい描いて初めて組立図が完成します。
日経の記事には、「デザインレビューは、〜中略~設計において求められて項目を満たしているかどうかの視点に立ち、設計上の課題や問題点を洗い出して議論する場である」とあります。一般にデザインレビューは会議形式で行われますが、まだ設計、製図が出来上がる前に随時その筋のベテランに修正してもらうことが、最も効果的なデザインレビューであると現在思っています。設計、製図が出来上がった時には、同時にデザインレビューも終わっているのが理想です。
ちなみに、ドラフターの周りでは、技術的なレビューだけでなく「シャープペンシルや平らな芯の鉛筆の使い方」「見やすい図の配置の仕方」「寸法の入れ方」など技能面のレビューや、「心配するな。中空の球以外であれば何でも作れる。迷わず描け」など精神面のレビューも行われていました。
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